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細い体……。
彼女、江崎紫音(エザキ シオン)は自室のベッドに座っていた。
白いTシャツにミントグリーンの踝丈のプリーツスカートを履いている彼女は、青白い顔をしていた。細い手首には包帯が巻かれている。叔母の話では夜中に手首を切ったそうだ。だいたい自分たちが寝た夜中にそう言うことをするとのことだ。
「初めまして。」
と言っても返事はない。こっちも返事などは期待していない。
勉強なんてできる状態じゃない。
そんなことは誰が見ても分かることだ。
一瞬、躊躇ったが、俺はベッドに上がって彼女の隣に座った。向かい合っているより話しやすいと思った。
「佐々井亜貴って言います。一応、君とはいとこにあたる。今日からとりあえず夏休みの間は、時々、会いにきてあげてって叔母さんから頼まれてる。」
「……。」
「迷惑?」
「……。」
虚な目。生死すら疑うぐらいの。
「まぁ、いっか。今日はこのままここにいさせて。」
でも、俺とは比にならないかもしれないけど、全てを遮断してしまう気持ちは全く理解できないわけではない。
手首の包帯が少し赤く染まっている。
「痛くないの?」
「……。」
「手首。」
触れていいのか、精神科医でもない高校一年生の俺には判断できるわけもない。でも、このまま触れないのは違う気がしていた。
「切ったら楽になる?」
「……。」
虚だった紫音の目が少し開いた気がした。そうだと言うかのように。
「はい。」
俺は隣に置いていた鞄からペンを取り出して、彼女の包帯の上に自分のスマホの電話番号を書いた。
「楽にはならないかもしれないけど、切るぐらいなら連絡して。夜中なら起きてることが多いから。」
「……。」
「勉強をしてるかギターを弾いてるかしてるから。」
「……。」
それ以上は何も話さなかった。
俺は包帯の巻かれた紫音の掌を握っていた。
初めて会ったのに。
なぜだか彼女を一人にさせられないって思っていた。
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