小さな手

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❇︎❇︎❇︎❇︎ 紫音は今日もベッドに腰かけていた。手首の包帯は今日もある。 「また切ったの?」 てか、最後に会った日よりさらに痩せた気がする。叔母さんはそのことも心配していた。ここ数日、本当にほぼ何も食べていないのだと。 背負っていたギターを部屋の壁に立てかけるように置かせてもらい、ベッドに上がってこの間と同じように隣に腰を下ろした。 「連絡してって言ったでしょ。」 今日もペンで彼女の包帯に連絡先を書く。その時、ふと、枕元に置かれた使い古した包帯に目が留まった。 包帯には確かに黒いペンの文字の跡がある。 「これ、前に俺が書いた……」 「……。」 捨てずに置いておいたのか? 「いらない物じゃなかったの?」 「……。」 今日はTシャツの上にキャミワンピースを着ている。丈が短いので、足首が見えているが、折れそうなぐらい細い。 何か食べないと不味いのではないか。 このままじゃ本当に。 「叔母さんがご飯を食べないことを心配していた。」 「……。」 紫音の表情は変わらない。視線が合わない。 こんなこと言っていいのだろうか。数学の答えを見つけるよりも難しい。人の心に正解を探し出すこと。 「死のうとしてるの?」 「……。」 そう言ったが、もちろん返事はない。そうして長い沈黙が続いた。   突然、 「……死にたくない……」 消え入りそうな声で彼女は確かにそう言った。 「……生きるのも怖い……」 ひとつのパーツを見つけた気がした。 紫音は夜中にこの部屋で手首を切って、その後、自分で包帯を巻いているのだ。 生きることを本当に放棄しているなら、そんなことしない。無意識かもしれないが、彼女の体はまだどこかで生きたいって思っているはずだ。 その時、部屋のドアがノックされた。 「亜貴くん、あの、良かったら晩ご飯どうぞ。紫音ちゃんも食べれたら一緒に……。」 部屋のドアが開いて、お盆に晩ご飯をのせた叔母さんが姿を見せた。紫音が食べやすいようなコンソメ系のスープや冷奴、柔らかくなるまで煮込まれた鶏の照り焼きなどがのっていた。 「ここに置いておくから、食べてくれると嬉しいわ。」 叔母さんは紫音の部屋のセンターテーブルにお盆ごと食事を置くと、そそくさと部屋を出て行く。 なんとなく少し違和感を覚える。 紫音に遠慮している?接し方がぎこちないような感じがする。
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