82人が本棚に入れています
本棚に追加
あぁと思った。
この人はずっと自分を責めていたのだ。
紫音がいじめられたのは、自分たちが結婚して転校することになったから。
紫音が手首を切るのは、自分が母親として支えられないから。
紫音がご飯を食べないのは、自分が作る物が悪いから。
そうやって責め続けて、彼女と向き合うのが怖くなった。
「大丈夫だよ。高校生の俺が言っても説得力ないかもしれないけど、紫音は心の片隅で生きたいって思ってるよ。」
「えっ?」
「初めて会った時に言ってた。死にたくないって。それは、叔母さんと父親とここで暮らしていこうと思っているからでしょ。」
「……。」
「俺、彼女が生きるための力になりたいです。」
「亜貴くん……」
「いい加減なことはしません。最後まで傍にいるつもりです。」
叔母さんは顔から掌を外して、泣き腫らした目で俺のことをしっかりと見た。
「連絡するわ。あなたのお母さんに。もう一度、お願いしたいって。夫に頼んでそれなりの報酬をつけさせてもらう。」
さすが母の妹だ。母がどこで心が動かされるかを読んでいる。
「紫音ちゃんともたくさん話をしてみようと思う。私ね、初めて会った時、本当に嬉しかったの。こんなに可愛い子が娘になるんだって。」
叔母は俺に手を差し出し、握手を求めたので、その手を握った。
「これからも紫音ちゃんのこと、よろしくね。」
最初のコメントを投稿しよう!