始まりのキス

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❇︎❇︎❇︎❇︎ 年上の彼氏に可愛いなぁって言ってもらって、頭をなでてもらうようなお付き合いに憧れていた。それで、20代半ばで結婚して20代後半で子どもを生むような人生プランがいいって。 そしてその第一歩が叶ったのだ。 銀行の窓口で働く私に舞い込んだ幸せ。夏の終わりに隣の支店と合同の飲み会があり、その時に出会った5歳年上のエリート銀行員。新卒23歳の私から見たら仕事のできる素敵な先輩。 その人と縁あって冬の気配を感じ始める秋の終わりにお付き合いすることになった。 あぁ、今日もかっこよかったな。潤さん。 私、石田雫(イシダ シズク)スキップしそうなぐらいご機嫌に5階建ての賃貸住宅の廊下を歩いていた。仕事終わりに彼氏の奥村潤(オクムラ ジュン)さんとディナーを食べに行った。 社会人1年目の自分には知り得ないフランス料理のお店。コースで予約してくれていて、席も窓から夜景が見える特等席だった。 得意先の人に教えてもらったんだと、皺ひとつないスーツを身に纏って笑う潤さんに、私はもうそれだけでお腹いっぱいになってしまうぐらいメロメロだ。 明日が仕事でなければ、このままうちに誘ったんだけどと、そんな言葉を交わして、今日はお開きになって私は帰路に着いたのだ。
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