始まりのキス

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それから翔太は週に3、4回は我が家でご飯を食べて過ごすようになった。それ以外の日は、友だちの真尋くんの叔父さんの家で過ごしたり、両親のどちらかが帰ってきて一緒に過ごしたりしていた。 翔太は、私たちとの関わりに慣れると、色々な話をしてくれるようになった。私は弟が母は息子ができたような気持ちになって、いつしか翔太のいる日常が当たり前になっていた。 私は翔太の宿題の面倒なんかも見るようになり、リビングで翔太は宿題、私は高校の受験勉強に取り組んだりもした。  学年が上がるにつれて、翔太の子どもらしい可愛らしさはどんどん消え失せ、次第にちょっと生意気な少年へと進化を遂げた。 「男の子はやんちゃぐらいがいいのよ。」なんて母は言って、翔太もそんな母のことは慕っていた。 私に対しては今まで「雫お姉ちゃん」って呼んでいたくせに、10歳の誕生日を機に「雫」って呼び捨てするようになるわ、勝手に人の部屋に入り込んで、ベッドを占領して漫画を読んで何時間も過ごすわ、自分の気分がのらない時は、話しかけても返事をしないわで、自分中心の立派な反抗期を迎えてくれたわけだ。 それでも翔太と過ごす時間は、私もありのままでいられたので、苦痛なんてものは全くなく、翔太が来ない日はどこか退屈にさえ思えた。
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