始まりのキス

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「雫も病院に行けよ。土曜の午後は空いていないところが多いだろうけど、時間外のとこでも診てもらえるよ。」 「翔太は?」 「俺?午前中に行った。それで医者からインフルエンザって言われて、恵子さんに話したら、雫は大丈夫かしらって心配してた。今日、デートなのにって。」 お母さん!!なんでそうすぐに翔太に話すかな。お母さんが話さなかったら、こんなことにならなかったかもしれないのに。 「そんな時、家にスマホの充電器を置いてきたことに気付いて、取りに行って戻ってきたら、雫が男といちゃついてたから、声をかけたの。」 「いちゃついてなんかいない。あぁ……もう最悪。てか、何で抱きしめたのよ!?」 潤さんの前で、キスしない方がいいとか言って、私の腕をとって、抱きしめたりするなんて。 「だって雫は俺のものだもん。」 「……あんた、高熱でもあるの?自分で言ってること分かってる?」 俺のものって……ハルちゃんがいるくせに。 「……俺、もう寝よ。」 翔太がゆっくりと立ち上がる。背丈が伸びたので、のそのそと言う表現がピッタリの動き方だ。 「ちょっと!寝るってどこで!?」 「雫のベッド。恵子さんがいいよって。」 「お母さんが良くても私がダメ!だって、私の寝るところがなくなるじゃん!」 「一緒に寝たらいいよ。もううつすものもないんだから。」 「そういう問題じゃない!!」 お母さんも翔太も変なところがズレているのだ。例え風邪を引こうと、インフルエンザになろうと、同じベッドで寝ていい年齢は、とっくに過ぎているのに。
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