始まりのキス

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最終的にデパートで最初に選んだセーターを母に買った。その後は二人でぶらぶらとウィンドウショッピングをした。 私も翔太もピアスの穴をあけていて、二人でアクセサリーを見たり、マフラーを見たり、靴を見たりした。途中からどちらが「これ何!?」って商品を見つけられるかなんてゲームもして、買う気もないのに様々なお店を行き歩いた。 一頻り楽しんだら、晩ご飯をどうするかって話になったが、母から[晩ご飯いるー?鯖の塩焼き焼いたよ]って、ミケ猫が魚を咥えているスタンプ付きのメッセージが私の元に届いて、翔太と顔を見合わせた。 「帰る?」  「うん。恵子さん、きっと一緒に食べたいんだよ。」 「そうだね。」 すぐに話はまとまって、二人で帰りの電車に乗って家路へ向かった。 「翔太、いつピアスあけたの?」 帰りの電車の中。行きと同じように座席に座るが、窓から差し込むのは街の街灯。日暮れが早くなり、太陽は早々と西の空に沈み、街を人工の光が包んでいる。 「えー?この秋ぐらい?」 「ふーん。」 また全然知らなかった。 「別に深い意味はないけど。その場のノリ?ハルとあける?って話になってあけた。」 「そうなんだ……」 ハルちゃんと一緒にか。 「何?ハルのこと気になってんの?」 「ええっ!?気になってなんかない!」 「そのわりには、ハルの話題になったら、いつもテンションが下がるよな。」 「さ、下がってなんかないって。お、お母さんが可愛いって言ってたからそれで……」 それで、何だ?気になってって……気になってるんじゃん。 「ハルが可愛いねぇ……まぁ否定はしないかも。」 ほら!翔太のやつ、ニヤニヤしてる!!めちゃくちゃ好きなんじゃん、ハルちゃんのこと!!
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