始まりのキス

24/32
前へ
/137ページ
次へ
帰宅して母も含めた3人で食卓を囲んだ。鯖の塩焼きに金平牛蒡にお浸しにと和風のメニューが並んだ。 母は私たちが一緒に帰って来たことをなぜだかすごく喜んでいた。プレゼントは来週の12月26日に翔太と渡すことにしている。その日が誕生日だから、ケーキを買ってお祝いをしようって。 「楽しかった?」 「うん。変な商品、一杯探したよね。」 相変わらず翔太は魚の骨を取るのが下手なので、話しながら私が先に解してあげる。 「えー?何それ?」 「どちらがいかに何に使うか分からない物を探せるかってのしたの。」 「ふふっ。相変わらず仲良しなのね。」 母の一言に、翔太と目が合った。 仲良し…… 「翔太はずっと弟みたいなものだから。」 骨を取り切った鯖の載った皿を翔太に差し出した。 「サーンキュ。お姉様。」 「……お姉様とかうざい。」 わざとだ。お姉様なんて今まで呼んだことないくせに。私が弟なんて言ったからだ。 「まあまあ、二人とも!」 母が話を切るように、パチンと手を叩いた。 「今日ね、隣の奥さんから旅行のお土産にプリンをもらったの。良かったらご飯の後に食べてね。すごく美味しいから。」 「ありがとう、恵子さん。」 母は本当に翔太のことを可愛がっている。もし、この先、翔太が我が家に来なくなったら、父がいなくなった時ぐらい気落ちするのではないかと思う。 私と翔太の関係が途絶えたとしても、翔太はいつでもこの家に来たらいいと思う。母に会いに。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加