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男が現れたのは三年後だった。今度は七色に輝く衣をまとっている。
炎も冷気も、竜の瘴気さえも通さずその身を加護する神具、虹の衣。
雲より高い山の上に祀られたそれを、男は三年かけて手に入れた。
男の姿を見て、魔人は内心で驚かざるをえない。虹の衣を見て――ではない。男が再び眼前に立ったことにわずかな驚愕を覚えた。
はや七年、見目変わらぬ魔人と違い、男の体はより強靭に、その顔はより精悍に成長している。
果たしてこの男は、自分が幾度も殺してきた男なのか。三年前、瘴気に包まれ腐り落ちるというおぞましい死に方をした男なのか。
もしそうだとすればなぜ、この男は再び我が前に立つのか。どれほど数多に殺されようと、どれだけ無惨に殺されようと、なぜ心折れず、新たな力や装備とともに、再び挑むというのか。
男は魔人の息吹を攻略した。
しかし、魔人の武器はその強靭な尾や息吹だけではない。
竜の咆哮。数里先まで響き渡るほどの咆哮を間近で受けた男は、神経がちぎれ飛び目玉がはじけ飛んだ。
一年後。害なす音すべてを遮断する無音のピアスを耳につけ、男は魔人の前に立った。
竜喚び。魔人の咆哮に応えて舞い降りた無数の飛竜に襲われた男は、噛みつかれ切り裂かれ踏み潰され、生きながらにして貪り食われた。
一年後。空を舞うものすべてにいかずちを落とす空雷のスクロールを手に入れ、男は魔人の前に立った。
竜の雷撃。額の角から迸った青い雷撃に貫かれた男は、体の内外あらゆる部分を焼き焦がされ絶命した。
一年後。いかなる雷撃も逸らせる反雷の指輪を指にはめ、男は魔人の前に立った。
一つずつ、確実に自分の手を潰していく男に。
一歩ずつ、確実に自分を追い詰めてゆく男に。
魔人は、かつて感じたことのない感情を抱いた。
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