束の間の平穏と、再誕

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束の間の平穏と、再誕

 こうして、魔人の脅威は去った。  統べる者を失った竜たちは人里離れた奥地に隠れ、あるいはなおも人を襲い討伐された。  そうして、世界に平穏が訪れた。  魔人が死んで、十年後。  火を噴く山の最奥。紅蓮の溶岩が湧き上がる根源のほとり。  大地を経て砂漠を越え、川を流れ海を渡り、集まった竜の因子が人の姿を形作った。  魔人は決して滅びない。  たとえ死んだとしても、その心身は無数の因子となって世界中に飛び散り、もの時をかけて生まれた地に結集して再誕する。  そう、本来ならば、再誕は百年後のはずだった。  死してなお残存した異常なまでの執着が、過剰なまでの執念が因子の集結を加速させ、魔人の再誕を実に九十年も早めさせた。  再び降臨した魔人は、ただひとりを探し求めて、行動を開始した。
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