天と地の差

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 暗闇の部屋で、深夜番組をぼーっと眺めている。  テレビをつけて数時間が経っているのに、何一つとして頭に入ってこない。  それもそうだ。消音にしているわけじゃないのに、テレビの音よりも何故か秒針の方が勝っているのだから。  でも、字幕を読んでいるというのに何も頭に入ってこないのも、また異常だと思う。  異常な自分を自覚しては心が軋む音が聞こえ、現実逃避をしようと目を伏せた時に瞼が重いことに気づく。故意に見ないようにしていた時計に視線を向ければ、針は夜中の2時を指している。 「今日も、2時……」  この時計でこの時間を見るのは、一体何回目だろう。その度に心を痛めているのは何回目だろう。  途中から教えなくなった私は偉いのか、それとも偉くないのかは分からない。判断もできないくらい、今の私は正常ではない。  虚ろな目をゴシゴシと擦りながら重くなった腰を上げて、足を引きずるようにしてダイニングテーブルまで行く。ラップをしてある料理のお皿を手に持ち、冷蔵庫に入れる。いつもの定位置にそのお皿を置き、力一杯冷蔵庫を閉めたい欲をグッと堪えて静かに冷蔵庫の扉を閉めた。  普通ではなくなった頭では色々と判断しづらくなっているけど、私がしている行動はとても愚かだってことだけは解る。    溜め息をつくと同時に背中を丸め、また足を引きずるようにして歩きながら今度こそ寝室に行く。倒れ込むようにベッドへ横になって目を閉じる。けれど眠気何て当然のように襲ってこない。  自分が不眠症になった正確な時期も分かるし、こんなに酷くなってしまった時期もちゃんと分かっているけど、どうしても導入剤には頼りたくなかった。これ以上、飲む薬を増やしたくなかった。  でも、こんなにも辛い思いをしているのなら、そろそろ頼ってもいいんじゃないか? なんて思ってしまう自分もいて。どんどん自分がダメな方向の考えになっていることが悲しくて、自然と涙が浮かんでくる。それを皮切りに仕事のこととか、私生活のこととかをグルグルと考え込んでしまい、寝たいのにどんどん眠気が遠のいていく。  もう寝たい。明日も早く家を出て行くというのに。  今すぐにでも寝ないと体が持たないのに。  久しぶりに嫌なことを全て忘れるくらい熟睡したい。自分のことすらも忘れてしまうくらい、何年と寝ていたい。できるなら一生、寝たままで生涯を終えたい。  毎日のようにこんなことを考えている自分がふいに馬鹿馬鹿しく思えて。もっと違うことを考えたり、楽しかったことを思い出したりすればいいのに、それすら今の私には難しい。  思い出せることは思い出せるけど、今の状況と比べてはイライラしてしまう。ただ無邪気に笑っていた頃が、幸せだと感じていた頃が自分のことだけどあまりにも羨ましくて故意に思い出さないようにしている。  それらから目を背けることで、なんとか自分を保っていることが出来る。なんてことはないけれど、そこまでしないといけない状況になっていることがとても悲しくて、泣くのを我慢するように枕に顔を押し付けた。
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