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「はい」
「あ、もしもし……? 清水です」
「お疲れ様。仕事終わったのかな?」
「あ、いや……残業しないといけなくて。日にちって変更できますか?」
「それは出来ないよ。ごめんね」
「そう、ですよね……あの、20時過ぎても大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。21時までに来てくれたら」
「分かりました。本当にすみません……ご迷惑かけて」
「謝ることじゃないでしょう。迷惑だとも思ってないし、気長に待ってるから慌てないで来るんだよ?」
「……はい。失礼します』
電話が切れたことを確認してから、はぁ……と深く長いため息をついた。
19時には仕事を終わらせないといけなくて。けれど終わるわけもなく、家に持ち帰ってやるしか選択肢はなくて。土日に家で仕事をするのと、此処に来て仕事をするのとじゃ、まだ家の方がいいに決まってる。どっちも休めることはないけれど、いつでも横になれる環境の方がまだいい気がした。
書類を上書き保存をして、パソコンの電源を落とすと同時にまた溜め息をつき、私は椅子に足を乗せて膝を抱える。
こういう時に弘樹を頼りたいのに頼れない。以前は頼ることが当たり前だったから、まだそういう考えになってしまう自分がとても醜くて仕方がない。
今は、誰一人と頼れる人が私にはいない。それが何もかも物語っていて、膝を抱える力を強めた。
「甚い……甚いよ……」
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