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「弥生ちゃんッ!?」
倒れた私にすぐ駆け寄ってくれた湊さんは、周りの人に救急車の手配などを切羽詰まった感じで頼んでいて、そんな湊さんを見て私は心の中で謝った。
ごめんなさい。
本当に、ごめんなさい。
私、弘樹に酷いこと言ったんです。それなのに責めるだけ責めて、最後は縋りつこうとした。傷ついて、泣いたのはきっと私だけじゃないというのに。
そんな最低な私となんか弘樹は出会わなかった方がよかったんです。私がもっと早く弘樹を解放してあげていたらよかったんです。そうしたら、お互いこんな思いはしなかったはず。傷は浅かったはず。
「あの馬鹿……何で出ないんだよ……!」
だから、弘樹を責めないであげてください。
どうか、弘樹の幸せだけを願ってあげてください。
狭まった視界で、湊さんが必死に何かを言っている。けれどもう、周りの音は一つも聞こえない。耳の中に水が大量に入ってしまった、あの感覚に近い。
楽しかった思い出やら、弘樹から告白された時、プロポーズをされた時の光景や幸福感やらが走馬灯のように駆け巡り、最後まで苦しさを覚えながら私の意識は闇の奥底へと沈んでいった──。
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