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「クシュンッ……」
自分のくしゃみで意識が戻ってきた私は、ゆっくりと目を開けるなりブルッと身震いをした。
ああいう状態になったら薬を飲まないといけないのに、薬を取りに行く気力が端からなかった私はいつしかトイレから出た廊下で眠っていたらしい。
虚ろな状態で体を一通り触って異常がないか確認する。
怪我はないし、少し頭が痛いくらいで呼吸も正常だ、と安堵を覚える。
それでも薬は飲まないといけない。
死んだように冷たくなった体はとても怠くて、体に鞭を打ちながら起き上がり、壁伝いに歩いてリビングまで移動する。ソファに座って一息つくとかそういう寄り道は一切せず、薬を隠している棚から薬を取り出して、棚の横に常備してあるペットボトルの水で胃に流し込んだ。
常温の水で流し込んだというのに、何故かキンキンに冷えた水のような感覚を覚えた。自律神経が乱れているってことを再確認しながら、私はようやく時計を確認した。
時計の針は5時を指している。今日もまだ外が暗い時間に必然と起きてしまった。ううん、今日も同じ時間に起きてしまった。
アラームもなしに、毎日毎日同じ時間に起きてしまうのは、ある意味病気なのだろうか? これ以上、自分が病気ということを自覚したくないんだけどなぁ。
カーテンの隙間から見える真っ暗な空を見ながらそんなことを思い、6時半までに身支度、洗濯、朝ご飯を終わらせないといけない事に思わずため息が漏れてしまう。
何故、6時半までなのか。
それは、駅のカフェが6時半からしかやってないから。
出社は8時でいい。けれどその時間までこの家に居ないといけないのは、あまりにも地獄すぎる。だからカフェでコーヒーをテイクアウトし、電車が来るまでコーヒーを飲んで時間を潰す。
まぁ、家から出ても地獄はどこまでも続いているんだけど。
私が行く所は全て──地獄だから。
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