同類

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同類

 弥生と住んでいる家を出て、2日が経ってしまった。その間、弥生からの連絡は一度もなく、その代わりに何故か家族からの電話が絶えない。今も母さんと表示された画面を見て、思わずため息が漏れてしまう。  弥生から電話なんかくるはずがないって分かっている。けれど、どうしても弥生からの連絡を期待してしまう自分がいるから、終始ため息が漏れてしまうのだ。  こんなにも家族から電話が絶えないというのは何かあったのだろう。出なくちゃいけないって分かっていながらも、俺は出る気にはなれなくて無視を続けていた。  やっと母さんからの電話が切れ、ポケットにスマートフォンをしまおうとすれば、またスマートフォンが震え始めるから期待をして急いで画面を見れば、弥生からではなく今度は兄からの電話だった。はぁ……とため息をつき、肩を落としながらスマートフォンをポケットにしまう。電源を切ってしまおうかとも考えたけど、弥生から連絡がきた時に出れなかったという状況になるのは嫌だったから、切りたくても切れなかった。  弥生の連絡を待つのではなく、俺から連絡をしないといけない状況なのも分かってる。けれど、また拒まれるかもと思うと……なかなか行動に移すことが出来ないでいた。  全て、俺が悪いってきちんと理解してる。  同情してしまったのも、強く突き放すことが出来なかったのも、受け入れてしまった俺が全て悪い。  弥生に悲しい思いをさせてるって分かっていながらも、もう少し……もう少ししたらと考えれば考えるほど、彼女を突き放すことが出来なかった。  〝死〟という重い言葉が、その度に俺を縛りつけていたから。 「好きです」  仕事の帰り道、急に後輩が声をかけてきたと思えば告白をしてきた。  俺は職場に弥生と婚約していることを話しているし、何なら彼女だって婚約したことを報告した時にはとても祝ってくれていた。だから、正直そんな気持ちを抱かれているだなんて知らなかったし驚いたけど、玉砕するって分かっていながらも告白するという気持ちは俺にも理解できたし、最後の思い出作りみたいな気持ちなんだろう。と勝手に彼女の気持ちを美化させながら、俺は当然彼女の告白を断った。
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