同類

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「ごめん。俺、婚約者がいるから」 「……知ってます」 「そうだよね。気持ちは嬉しいよ。でも君の気持ちには応えられない」 「…………」 「君の仕事に対する姿勢とかは本当に感心してるし、仕事のことで困ってたらこれからも遠慮なく聞いてきて」  こう言えば、そこまで傷つけないで済むと思ってた。諦めてくれると思ってた。  でも現実は、そんな簡単なことではなかった。  周りにも人がいるというのに、彼女は突然泣き喚きだしたのだ。  俺は混乱に陥ったけど、目の前で泣いている彼女に早く泣き止んでもらいたくて、口癖である「ちょっと」を声に出しながら肩に手を置けば、彼女は勢いよく俺に抱きついてきた。 「な、何……?」 「本当に好きなんです……お願いします……」 「お願いって何……君も知ってると思うけど、婚約者以外の女性にこれっぽっちも興味ないんだよ。だから君の気持ちには応えられないし、はっきりって今すごく迷惑だよ」 「じゃあ! もし……婚約してなかったら、私のこと受け入れましたか?」 「受け入れないよ」  話聞いてないのかよ。  眉間にしわを寄せながら力任せに彼女を自分から引き剥せば、予想もしていなかったことを言われたことにより、俺の思考回路は一度停止した。 「私、もうすぐ死ぬんです!」 「…………え」 「あと半年で死ぬんです……! 半年だけでもいいから、私と付き合ってください……」 「それは……」 「死ぬって分かってから毎日死にたかったんです! でも、弘樹さんと出会ってから最後まで頑張って生きたいって思うようになって……だから最後は弘樹さんに見届けてもらいたい……」
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