同類

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 薬指でキラリと光る婚約指輪を見る度に心を痛めていた。  こんな状況になっていなかったら、今頃弥生と夫婦になっていたかもしれないのに、下手な言い訳をしながらズルズルと籍を入れるのを引き延ばしにしていたけど、当事者だというのに俺はどこか、今の現状を楽観的に考えているところがあった。  この事は弥生にバレないという自信が謎にあったし、俺の使命も終わって籍を入れるとなったら全て話そうって。弥生なら全て理解してくれると思ってた。現実は当然違ったけど。  弥生は俺のしてしまっていた事を知っていたし、弥生が俺を理解してくれることはなかったし、俺の愛すら弥生はもう信じていなかった。それが死ぬほど悲しかった。  許してくれなくてもいい。一生恨んだままでもいい。  ただ、俺も本当は大変だったってことを知ってほしかった。  なのに弥生は突然、自分も病気だと言い出した。  最初は戸惑った。  でも、弥生がそんなことを言う人だと思っていなかったから、無意識に眉間にしわが寄った。  自分もそう言えば俺が感心してくれるって、少なからずそう思わなかったら言えない言葉なわけで。俺がこんな状況だって分かっていながらそんなことを言えてしまう弥生に腹が立った俺は酷い言葉を弥生にかけて、今は弥生と顔を合わせていたくなかったから〝頭を冷やすために〟なんて嘘をついて家を出た。  兄の家に行こうとも考えた。けれど、弥生に知られてしまった以上、彼女と一緒にいるのはもう無理だったから話さないと。という理由で2日間も彼女の家に上がり込んでいる。  電話で出来た話しだというのに、弥生との関係に罅が入った元凶の彼女の家に来た俺は相当馬鹿で、話しをしに来たというのに全然話しが進んでいないのも含めて、俺は本当に救いようのないクズだ。
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