きっかけ

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きっかけ

それは、よくある貴族の集まりでの事だった。 私、カスミ・モロハシも、20歳を迎え、本格的に茶話会やパーティー等に顔を出す様に父に言われて、その集まりにも仕方なく参加していた。 青いドレスに、しなやかな身体を包んだ私は、1人で所在無げに椅子に腰掛けていた。 ああ、緊張する…。 何でこんな事してなきゃならないのかしら。 すると、そんな私に声を掛けてくれる人達がいた。 「素敵な髪飾りですね」 「ホントだ。よく似合っているよ」 「あ…」 俯き加減だった顔を上げる。 すると、私と同じくらいの歳でメガネを掛けた男性とニコニコ人懐っこい笑顔を浮かべた、私より歳下と思われる男の子が居た。 2人とも優しそうな雰囲気を醸し出している。 「あ、ありがとうございます。私も気に入っておりますの」 私の緊張は少しほぐれて、同じテーブルの椅子に腰掛けた2人の貴族男性に、そう御礼を言った。 「僕はワタル・スズキです」 「僕はリョウ・ヤマムラだよ!歳は21歳!」 「え…」 リョウくんが歳上だとは思わなかった。 私の小さな驚きの声は喧騒にかき消された様だ。 「私はカスミ・モロハシです」 私の父は元々貴族の出身ではない。 大商人から成り上がって、上級社会に昇りつめた。
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