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姿を現したのはワタル様だった。
彼のメガネがキラーンと光る。
「カスミ様を見掛けてここまで追いかけてきましたが、なるほど。秘密の取引でしたか」
「お願いです!ワタル様、センヤくんを…彼を何処にも連れて行かないで下さい!」
私はセンヤくんとワタル様の前に立ち塞がった。
後ろからセンヤくんの声がする。
「ワタルと言ったか。あんた、この事他人に洩らしたらどうなるか解っているだろうな」
「大丈夫ですよ。カスミ様を困らせることはしませんから」
ワタル様はそう言いながらコッチへ来る。
「ただ…センヤくん、ですか?貴方がこれからどうするのか興味がないと言ったら嘘になります」
「何、2人には迷惑かけねーよ」
その言葉を最後に背後からセンヤくんの気配が消えた。
振りかえるとセンヤくんの姿は何処にもなかった。
私は何故か一抹の寂しさを覚えた。
「カスミ様、お屋敷まで送っていきますよ」
「えっ!ワタル様は天上の雫に興味がないのですか?」
「言ったでしょう。貴女を困らせることはしないと。それより早くお屋敷に戻られた方が良いですよ」
私はワタル様に連れられて、帰路に着いた。
屋敷の前でワタル様と別れる。
彼は本当に私を困らせることはしなかった。
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