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ミュゼ様が、又か…と言うように溜息をつく。
私は雲行きが怪しいのを察して、父の持つ大金を話題に出した。
「もし、ミュゼ様が私に天上の雫を下さった場合、引き換えの金額に糸目は付けませんわ」
しかし、ミュゼ様は、何処か、つまらなそうに言った。
「あの宝石は、お金とは交換しないわ。いずれ王立美術館に献上することになっているから」
それだけ言うとミュゼ様は私に、もう興味が無くなったかの離れていった。
私は、王立美術館に天上の雫を献上する、とミュゼ様が言った言葉に衝撃を受けた。
そんな事をされたら一生、天上の雫が手に入らなくなってしまう。
私は荒療治に出る事にした。
パーティーの会場を、こっそり抜け出して、ミュゼ様の自室を突き止めて、あわよくば、天上の雫を戴いてしまおうと考えたのである。
警備も今日はパーティー会場中心なのか、会場を出ると薄暗い通路が在るだけであった。
私は当てもなく、通路を歩いて城の中を彷徨った。
と、通路の角を曲がろうとした時。
「キャッ…!」
私は何かにぶつかって、通路に倒れ込んでしまった。
「こんな所で公爵令嬢様と会うとは思わなかったぜ」
男性の声だ。
私は少し警戒しながら顔を上げた。
見るとガラが悪そう。
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