【2】混沌の捜査線

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連続爆破事件の中で起きた、消防隊員刺殺事件。 そして… 「次に紗夜、新龍会の件を」 「はい。今朝新龍会の本部ビルに藤堂美波が現れ、父親…いや違う、幹部組員の進藤刃を呼び出して射殺。他の組員数人を撃ち、組の車で逃走しました」 モニターには監視カメラ映像が映り、音声はないものの、その一部始終を見ることができた。 「間違いなく彼女ね。引き取っていた家族の稲村瞳さんから、今朝気がついたら消えていたと連絡があったわ。この書き置きを残して」 あの意味深な文面が映る。 「一体何の時が来たって言うのよ、父親ではないにしろ、美波は刃の娘の複製(レプリカ)。なぜ殺したのか?全くあれもこれも、意味不明だわ」 「車の運転手は、新宿駅近くで解放され無事です。その後の足取りはまだ不明です。彼女は拳銃二丁と十分な弾を所持。あと2人の殺害予定者を先に保護しないと、確実に()られます」 美波の能力を知る刑事課のメンバー。 確実と言った紗夜の言葉を噛み締める。 「指名手配については、保留のままね。新龍会は勿論、飛鳥神が組員や彼のネットワークを使って、情報を集めてくれてるから」 「えっ? 咲さん、飛鳥神って飛鳥組の組長…ですよね? それに、なぜ指名手配しないんですか?」 何も知らない舟越なら、当然の疑問である。 「えっとね💦 色々あって、飛鳥神は味方なのよ。藤堂美波については、後で昴から過去の事件を見せてもらって。信じられないかも知れないけど、禁断のバイオテクノロジーが創り出した複製(レプリカ)で、特殊な人工細胞により、異常な力と不死身の再生力を持ってるのよね」 「攻撃しない限り、目的以外では、彼女は人に危害は加えない。だから、捕まえようとして反撃されるリスクは冒せないの」 紗夜が指名手配しない理由を教えた。 「それで思い出した❗️」 「どうしたの淳?」 「あの風貌、あの草吹甲斐に似ている!」 「まさか? 彼は死んだはずよ。確かに、美波を創り出したし、天才科学者の変人だけど、あり得ないでしょう」 「本当に…死んだのは…奴かな?」 ずっと考え込んでいた桐谷が呟いた。 「死んだのは、奴が作った、自分のレプリカ…って可能性も、あり得るな」 「その逆かも知れねぇぜ、美波みたいに」 豊川が付け加え、更に淳一が足した。 思わず紗夜が反応し、立ち上がった。 「やっぱり紗夜もそうか?」 夫の淳一は、紗夜に微妙なものを感じていた。 「ええ、CAPSが作り出したこの人物が、どこまで現実に合っているのか分からないけど、見た瞬間に浮かんだのは、草吹甲斐。新たな命まで創り上げた彼が、あっさり死んだのも、今となっては不思議です」 「それもテレビで事件の真相を告白し、死を公開宣言までした。全てが死んだと思わせるため…」 「桐谷さん、私はテレビでそれを見ました。飛躍的な考えですが、紗夜さんの疑問は的を得ているかも知れませんね」 紗夜、桐谷、真田までそろうと、まず間違いないと思う皆んな。 「新龍会…確かバックアップしてたのは、神林(かんばやし) 尚人(なおと)だったわよね?」 「はい。その神林ですが、現在行方不明です。進藤刃の死も、連絡できていないとのこと。(じん)さんが、上海にいる会長の(シー) 皓然(ハオラン)に連絡して、帰国させると言っていました」 飛鳥組の傘下にある新龍会。 しかし、皓然(ハオラン)側近の神林は、かなり危険な存在であった。 「死んだ甲斐を指名手配する訳には行かないし、これも暫く任せるかな。聞いてるんでしょ神?」 不意に問いかける咲。 「さすがは俺の女だな。新龍会の連中には釘を刺しといたが、黙って座ってる奴らじゃねぇ」 「何が俺の女よ💦…❤️」 「まぁまぁ咲、照れるなって。たんだろ? こっちも状況は掴んでおきたいからな」 「ここ以外にもって…飛鳥神も通信機を?」 舟越には、訳がわからない。 「ちなみに、私も聞いていますので」 「だ、だれですか?」 「バカ、花山警視総監よ。このビルの上の方にいらっしゃるので」 ずっと、本庁にいるものだと思っていた舟越。 まだ会ったこともない、雲の上の存在である。 「富士本さん、咲さん。私の方から、草吹甲斐の指名手配を各署に連絡しておきます」 「それは助かります。我々が言っても、笑い飛ばされるのがオチですので。お願いします」 改めて、心強く感じる富士本であった。
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