【3】終焉の始まり

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〜港区高輪〜 高輪ゲートウェイ駅前にある古いビル。 かつては、黒龍会の隠れ本部であったもの。 「甲斐、奴の具合はどうだ?」 それには答えず、タブレットPCを操作しながら、親指でそちらを指す甲斐。 「心配してくれるとは、寛大な人ですな」 甲斐の座るデスクの右奥。 柱の向こうで、窓の外を眺める風井英正がいた。 「これはこれは、風井元警視総監。あなたの力は未だに健在。まだまだ役に立って貰いますよ」 長きに渡り警察組織のトップに君臨し、政界をも裏で操っていた風井。 多くの不正や不始末を闇に葬り、その代償として、各界の要人達を意のままにする巨悪の根源。 「そこの草吹甲斐博士は、死んだと聞いていたが、まさか生きていたとは。お陰様で心身ともに、以前よりも元気になった気がするよ」 甲斐の開発した人工細胞を移植し、自らの回復力を高め、より強靭なものに変えた。 「風井さん、貴方にはこの東京を陥落させて貰う。その為に、どこをどの様に攻めれば良いかをご教示願いたい」 「頼んでおいた物は?」 「もう直ぐ部下が持って参ります。あれに全ての闇の秘密があるのなら、まずはそのお披露目と行きましょう」 「ふはは…今更私には無用のもの。好きに使って、この国の中枢を崩壊させるが良い。その代わり私には、息子の仇討ちをやらせて貰う」 そこで初めて、甲斐が口を出した。 「宮本紗夜…か。奴には得体の知れないモノが潜んでいる。それを始末するまで、少し待て」 「始末するだと? 出来るのかね、君に?」 「私には無理だが、私の分身がやるはずだ。それより、次はどこを破壊する?」 (甲斐の奴、破壊の喜悦を覚えたか…) 以前の科学者だった彼の雰囲気は消え、制覇する者特有の優越感に満ちていた。 「神林さん、そう心配しないでいい。大きな恩がある貴方には、私も私の(しもべ)達も、害を成さない限り、逆らいはしないから」 ほとんど無表情の神林から、その心情を読んだ。 彼の頭の中では、事の成り行きが見えていた。 神林との関係が、そう長くはないことも。 「(しもべ)? 高嶺雅と藤堂美波か…。雅は母親の死後、アメリカから消えた。美波は、新龍会(うち)の刃を殺して逃走中。そんな奴らが(しもべ)と呼べるのか?」 「フフフッ、今に分かる。因みに、雅は大人に成長し、今この東京にいる。私には離れていても、それを感じることが出来るのですよ」 自分のDNAと、特殊な人工細胞を持つ2人。 ただ、甲斐にも誤算があった。 雅には、女児であったが故に、生まれずして殺された姉の怨霊が宿っていること。 そして美波には、純粋な刃の心と、由香の善良な心が残っていることである。
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