【1】異質なる者

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〜葛飾区京島〜 古風な白壁に瓦葺きの塀に囲まれた敷地。 その中央に聳え立つ、関東新龍会の本部ビル。 その玄関に、1人の少女が立った。 「何か用か? お嬢ちゃん」 門番が顔を近付けニヤリとし、肩に手を乗せた。 無表情でその手を片手で掴む少女。 「進藤(しんどう) (やいば)に用がある。美波(みなみ)が来たと、伝えろ」 握られた手首に、少女の指が減り込む。 「グオッ!」 その反応を見て、手を放した。 慌てて中へと入る門番。 その後に続いて行く、藤堂(とうどう) 美波(みなみ)。 何人かの男達が現れる。 それを全く気にせず、ロビーのソファに座った。 「もしもし、刃さんを頼む」 さっきの門番が、内線で進藤のフロアに掛けた。 新龍会幹部、神林(かんばやし) 尚人(なおと)の身代わりとなって服役し、出所した進藤刃。 その間にイジメられ、自殺した娘の由香。 妻も後を追い、その(かたき)を殺害した。 逮捕されたものの、異例の減刑と多額の保釈金で復帰し、幹部の一員となっていた。 「俺だ、どうした」 「刃さん、玄関ホールに、美波ってガキが来てます。追い出しますか?」 「追い出せねぇから、電話してんだろうが。手ぇ出すな。丁重に、応接室へ通せ」 電話を切る。 (美波…今更何の用だ?) 死んだ娘の由香と瓜二つの美波。 狂人的な天才科学者、草吹(くさぶき) 甲斐(かい)である。 黒いスーツに着替え、1階の応接室へ入る刃。 コーラを飲みながら迎える美波。 向かい合ってソファに座った。 「稲村とか言う家の居心地はどうだ?」 「良かったよ。私には勿体無いくらい。でももう終わり。私がいたら、巻き添えになるから」 「出て来たのか…何が望みだ?」 「拳銃二丁と弾と500万。()らなきゃならない奴が、3人いる」 余りにも唐突で、似合わない要求。 思わず笑い出す手下たち。 「うるせぇ、黙れ❗️」 刃の一喝で、静まる手下。 彼らは美波の正体と強さを知らない。 「おい、持って来い」 「マジっすか? 」 さすがに驚き、確認する。 「フルオートのベレッタ、マガジンは装填済みで4つ。弾は1ケース」 「だそうだ、さっさと持って来い❗️」 「へい!」 真剣な声に、慌てて駆けて行く手下。 「敵は3人か…誰だ?」 「知らない方がいい」 真っ直ぐに刃の目を見返す美波。 「私の体は作られたもの。あんたの娘の由香に恋した、草吹甲斐によってね。だから、由香のDNAと甲斐のDNAも混ざり合ってる」 「それに、強化された人工の自己再生細胞か。全く、化け物だなお前は」 手下が戻って来た。 テーブルに、銃とマガジン、弾、金を置く。 「化け物…ね。嫌いじゃないよ、その呼び名」 確かめる様に、二丁の銃を手に取る。 そして、刃へ銃口を向けた。 「このガキ、何を⁉️」 「うるせえぇ、黙ってろ❗️」 動じることはなく、刃が叫ぶ。 「やっぱり、1人目は俺か」 ニヤリと笑み、美波の目を睨む。 「あんたが神林の代わりに務所へ入ったから、娘の由香はイジメられ、自殺した。そして、由香の母親もね。これはその恨みだ。死んで償え」 刃が避けなかったのか。 或いは、その間がなかったのか。 「バン💥」 何の躊躇(ちゅうちょ)もなく、至近距離から放たれた銃弾は、刃の額を貫いた。 「バン💥バン💥」 銃を抜く間もなく、部屋にいた2人が倒れる。 素早くバッグに全てを詰め込み、撃つ。 「バババン💥」 入って来た3人を容赦なく殺した。 ロビーを玄関へと走る。 「このガキが!待ちやがれ!」 「パンパン💥」 「パンパンパン💥」 数人が追いかけながら、発砲した。 肩と右足に被弾したが、気にしない美波。 外に出て、幹部用BMWの運転手を銃で脅し、鍵を奪って乗り込む。 「待てコラ❗️」 走り去る車に銃弾を浴びせるが、防弾仕様車には無意味な攻撃であった。 「あと2人」 無表情で呟き、都内へと消えて行った。
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