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助けがいない…
落胆する咲達。
その通信機に、神の声がした。
「待ってろ、もう直ぐ着くからよ」
「神? どうして…」
「甲斐はともかく、雅を捕まえるなら、数で勝つしかねぇだろうが。警察も消防も自衛隊もいない今、俺たちしかいねぇと思ってな。都内の全部隊を集めて来たぜ!」
「神! また傷口が開くわよ!」
「痛てて…風花ぁ、緊急で一時退院許可を頼む」
「無理でしょうこんなんじゃ、神さん。組長代理の近藤と申します。神さんは大人しくさせときますので、何卒ご勘弁を」
「こら、勝手に通信機取るな、返せ」
「いいわ、許可します。その代わり、戻ったらベッドに縛りつけるから」
「そんな趣味はねぇが、サンキュ!風花ちゃん」
「バカ!全く…」
毒づきながらも、笑みがこぼれる風花。
「咲さんこれ見てください!」
モニターに周辺の衛星映像を映す昴。
物凄い数のダンプカーや、それらしい車が、直ぐ近くまで押し寄せていた。
「アイ、シールド弾で周りを防御して、ミサイルで瓦礫を破壊するわ。シールドの正確な位置と着弾位置を計算して」
「了解しました、直ぐに転送します」
「桐谷、ちょっと揺れるけど我慢して」
「座標セット完了しました」
「バシュバシュバシュバシュ!」
躊躇なく、シールド弾を撃つ凛。
「シールド展開!」
瓦礫を囲む様に、4箇所から超音波とコスモエネルギーの壁が広がる。
「ビッ、ババシューン…」
次いで、小型ミサイルを2発撃ち込む。
「ドドーン💥💥」
瓦礫の山が吹き飛び、シールドにぶつかった破片は、超音波で粉砕された。
「桐谷、生きてる?」
「何ともないわ、大丈夫よ」
「シールド解除。神、後は任せたわ」
「了解!」
神達が到着した。
「お前らいいか、この地下に、美しい女が閉じ込められてる。気合い入れて助け出せ❗️」
「ゥオォー❗️」
瓦礫を囲んで幾つかの列を組み、次々と手渡しでダンプへと瓦礫を運ぶ。
「す…すごいですね」
「ああ、あの統率力と行動力は、学ぶべきだな」
映像でみながら、昴と富士本が呟く。
あの自衛隊にも、勝るとも劣らないものであった。
作業は1時間掛からずに終わった。
途中で見つかった久宝の遺体は、丁重に扱われ、紗夜が呼んだ地元の救急車で運ばれた。
そして、地下から現れた『美しい女』。
思わず拍手と黄色い声が飛ぶ。
(な…何なのよ💦)
照れながらも、つい軽く手を振る桐谷。
相棒の久宝の死に、笑顔はない。
豊川達が地下へ入り、草吹甲斐の現場検証の後、運び出して警視庁へと移送した。
「自殺か雅の仕業かは分からねぇが、目が見開かれていたことから推定して、まず雅の仕業だな。普通…頭撃つ奴は目を閉じる」
「現場にこれがあったわ」
紗夜が都内の地図を広げる。
「マーキングされてる場所が、雅が爆破したところだな。ここもちゃんと記されてやがる」
「これをわざと置いて行ったということは、爆破はもう終わったと見ていいわね」
「よし、とりあえず帰るとするか」
神のところへ行く紗夜。
飛鳥組傘下の数人の組長が集まっている。
「神さん皆さん、警視庁の紗夜です。本当にありがとうございました」
深々と頭を下げた。
「おいおい紗夜さん、やめてくれよ。なぁお前ぇらもそうだろ?」
「ああ、警察に感謝される立場じゃねぇからな。俺たちは、飛鳥神に従って動いただけだ」
「そうだぜ、気持ち悪ィ。まぁ…こっちも美人だからいいけどよ」
「バカ、とにかくそう言うことだ紗夜さん。おかげで、皆んなの顔も見れたし、ヤクザの絆ってのも確認できて、丁度良かった。雅がいなかったのは残念だが、必要だったらまた手ぇ貸すぜ」
うなずく組長たち。
「よし、皆んなご苦労!今日の礼はまたにするが、今夜歌舞伎町で飲むなら、全部俺の奢りだ。解散❗️」
「ぅおおー‼️」
それぞれに帰って行く組員達。
もう一度軽く頭を下げて、車へ戻る紗夜。
背後で、『愛の讃歌』が鳴り響いていた。
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