【1】異質なる者

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〜港区浜松町〜 JAPAN-TV本社ビル。 今夜の特番を前に、昨夜から作業が続いている。 「あ〜サッパリした。皆んなもご苦労様」 少し仮眠した後でシャワーを浴び、着替えて来た柴咲(しばさき) 希美(のぞみ)。 「あ〜シャンプーの匂い、いいね〜生き返るよ」 「セクハラですよ、野村さん。アハハ」 メインキャスターを務める彼女。 ふと、自分の企画書が目に留まった。 (あれ?) と、そこへ。 「おはよう御座います。探してたんですよ、大ファンで。今日から番組のサブアシストをさせてもらう、楠木(くすぎ) 莉奈(りな)です」 ポニーテールに、丸い縁無しメガネ。 新人らしく若々しくて可愛らしい。 「あっ、莉奈さんね、よろしくお願いします」 珍しく、つい見惚れていた柴咲。 徹夜明けの男たちの、普段ありえない活気。 その理由が良く分かった。 「柴ちゃん、1回目のリハまで少し時間あるから、飯でも行こうか」 「そうね、なんだかお腹空いたわ。局長をプッシュしてくれたお礼に、今日は私が奢るわ」 「マジ? 俺の声なんかなくても、決まってたさ」 プロデューサーとスタジオを出て行く。 その後ろでは新人が、全員に挨拶回りしていた。 「いい()が入ったみたいね」 「ああ、局長のお墨付きらしい。若いってのはいいもんだねぇ」 「イヤミに聞こえるんだけど?」 「おっと、柴ちゃんは別格だから大丈夫」 何が大丈夫かは分からないが、自分の特番が生放送されるのは、何度経験しても嬉しいもの。 しかも、特別ゲストには、あのスーパースターのトーイ・ラブが来るとのことで、高視聴率は約束されたも同然であった。 何か不思議な感覚を覚えながらも、期待の方が圧倒的に強く、気にする余地はない。
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