109人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
〜港区浜松町〜
JAPAN-TV本社ビル。
今夜の特番を前に、昨夜から作業が続いている。
「あ〜サッパリした。皆んなもご苦労様」
少し仮眠した後でシャワーを浴び、着替えて来た柴咲 希美。
「あ〜シャンプーの匂い、いいね〜生き返るよ」
「セクハラですよ、野村さん。アハハ」
メインキャスターを務める彼女。
ふと、自分の企画書が目に留まった。
(あれ?)
と、そこへ。
「おはよう御座います。探してたんですよ、大ファンで。今日から番組のサブアシストをさせてもらう、楠木 莉奈です」
ポニーテールに、丸い縁無しメガネ。
新人らしく若々しくて可愛らしい。
「あっ、莉奈さんね、よろしくお願いします」
珍しく、つい見惚れていた柴咲。
徹夜明けの男たちの、普段ありえない活気。
その理由が良く分かった。
「柴ちゃん、1回目のリハまで少し時間あるから、飯でも行こうか」
「そうね、なんだかお腹空いたわ。局長をプッシュしてくれたお礼に、今日は私が奢るわ」
「マジ? 俺の声なんかなくても、決まってたさ」
プロデューサーとスタジオを出て行く。
その後ろでは新人が、全員に挨拶回りしていた。
「いい娘が入ったみたいね」
「ああ、局長のお墨付きらしい。若いってのはいいもんだねぇ」
「イヤミに聞こえるんだけど?」
「おっと、柴ちゃんは別格だから大丈夫」
何が大丈夫かは分からないが、自分の特番が生放送されるのは、何度経験しても嬉しいもの。
しかも、特別ゲストには、あのスーパースターのトーイ・ラブが来るとのことで、高視聴率は約束されたも同然であった。
何か不思議な感覚を覚えながらも、期待の方が圧倒的に強く、気にする余地はない。
最初のコメントを投稿しよう!