【8】真の支配者 〜Final Battle〜

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〜お台場〜 止むことのない雅の攻撃。 怒りが増し、激しさも増して行く。 近付くことが出来ず、再生を繰り返す美波。 今にも破られそうな結界。 「美波さん、下がって彼らを守って!」 ラブの指示に従い、襲い来る手を振り払う美波。 耐え凌ぐラブとT2、ティーク。 物理的な攻撃には無敵のバトルスーツも、悪霊を防ぐことは出来ない。 全ての攻撃は防げず、体中を切り裂かれ、(えぐ)られ、ボロボロの状態であった。 「クソッ…ラブ、俺たちに任せて下がれ。美波1人じゃ防ぎ切れねぇ」 「分かった、死なないでよ」 強烈なパワーはあれど、素手で戦う美波。 再生が追いついていない。 「さて、そろそろ本気で行くかT2」 「了〜解!」 ティークが蒼く光り、長剣のスピードが上がる。 T2が赤く光り、パワーの範囲が広がった。 本来なら、力は既に限界に達している。 「フッ、無駄な悪足掻(わるあが)きを。なぜそうまでして、そんなに弱くて、欲に生きる者達を守る?」 理解できず、笑みを浮かべながら首を捻る。 「雅さん…あなたは分かっていない。でもそれも無理はないでしょう。歪んだ欲望と実験で造られ、生まれる前に殺された姉の恨みを受け継いだ。それじゃ、分かるはずはないよね…」 ラブの優しい感情が、違和感として伝わる。 「雅さん、この世の中は、そんなに悪くはない。誰にも欲や悪はあるもの。でも優しさや、人を思いやり助け合う、善の心もたくさんあるんです。ここにいる代表者は、その想いが強い人達。悪霊の力に惑わされてはいけない」 少し違和感について考える雅。 しかし、到底理解できるはずはなかった。 まだ生まれて1年足らずの赤子である。 「無理だね。優しさとは何だ? 他人に何を思う? どう考えても、お前たちを理解することは出来ない。ラブ…お前は他とは違う気はする。しかし、我の邪魔をする者は滅殺するのみ」 雅の頭上で暗黒の瘴気が塊りを成していく。 その中で、無数の怨霊が(うごめ)き、唸り声を上げる。 (来る!…耐えられるか…) これまでとは桁違いに強い邪気。 T2とティークが下がり、ラブの盾となる。 「死ねェ‼️」 燃える様な強烈な怨魂。 それが真正面から襲いかかった。 (ここまでか…後は美優に、託す) 今まで無敵の存在であったラブ。 それが、初めて死を…覚悟した。 どんな苦境にも、強大な敵にも負けなかったラブ。 しかし、実体のない相手に、なす(すべ)がない。 (ごめん…皆んな) その囁きは、周りの全員の心に響いた。 「そんな…ラブが負けるわけないわ❗️」 窓に両手を突き、叫ぶ咲。 全員が拳を握り締め、歯を噛み締める。 その時… 「や・め・ろ❗️」 突然のその声に、攻撃が止まる。 「何っ⁉️」 雅が睨むその先に、紗夜と…あの少女がいた。 雅が現れてから、ズキズキと痛んだ右の掌。 幼児虐待の恐怖と怨念が、哀しみの悪魔を生んだ。 ソレはまだ、紗夜の中に留まっていた。 小盛山の子供達の怨霊を、自ら引き寄せて吸収し、紗夜の中に抑え込むことで力を増した。 「お前は…何なんだ?」 浮かんだ怨魂の勢いが弱まって行く。 雅のその問いに、紗夜と少女が同時に答えた。 「お・ま・え……わ・た・し・から・子供・達を・奪った・つ・も・り・か?」 「何っ⁉️」 強い…その圧倒的な脅威を感じた雅。 ラブによって紗夜から斬り離され、奪いに来た雅に吸収されたはずの怨霊。 その雅に、紗夜が告げる。 「あれは、あなたを救うため。今あの怨魂の中には、あなたの姉の怨念も居る。それさえなければ…雅さん、あなたは普通の人間として生きられるはず」 「我を…救うだと? まさかそんなことが…」 「で・き・る・❗️」 少女が目を見開き、手を差し出した。 少女の伸びた両手が、半分程に小さくなった怨魂を挟み、自分の方へ引き寄せて行く。 「やめろォォー❗️」 必死の形相で叫ぶ雅。 その瞬間に、不意に届いた思念。 (ダメ! 紗夜さん。そうはさせない❗️) (美優⁉️) 紗夜とラブには、美優の声が聴こえた。 そして、雷雲から現れる龍神の姿を…。 〜武蔵村山市・小盛山跡〜 正にその時。 轟き走る稲妻⚡️の中から、金色の龍が現れた。 「龍⁉️」 驚く風花と莉里。 美優の体が光を帯びて浮き上がる。 そして天を刺した指先を、白骨の山に振り翳した。 「(いにしへ)の悲しき(たましい)達よ、天へ昇り永久(とこしへ)の眠りにつけっ‼️」 「ビシッ⚡️シャァー⚡️❗️」 龍が吐き出した光が、白骨を包み込む。 すると… その光の中から、次々と現れる子供達。 薄く透けてはいるが、赤子を抱いた者もいる。 龍神がそれを掠めて、一気天へと昇る。 その跡に、天まで続く一本の光の帯。 それに吸い込まれる様に、天へと消える子供達。 「魂の…浄化」莉里が呟く。 「美優…やったわね」 光が天に吸い込まれて消える。 その後には、骨のカケラさえ無くなっていた。 一方のラブ達。 必死に手繰(たぐ)り寄せる少女。 その挟んだ手の間で、怨魂が薄れていく。 「行くな❗️」叫ぶ雅。 「クッ…」悔しがる少女。 誰もが、その消え行く魂を見つめていた。 何も無くなった、小さな掌の空間を。 怒りに震える少女には、誰も気付かずに… その時。 ラブは雅の異変が気になった。 よろよろと、力無く後ずさる雅。 もう何の脅威も感じない。 (まさか⁉️) 怪我も忘れて駆け寄るラブ。 倒れて行く雅を、滑り込んで…。 ラブの腕の中で、みるみる小さくなっていく。 「そんな…ありえないわ」 3階の刑事課から見ていた咲。 信じられない結末。 その場にいた全ての者が、暫し声を無くす。 雅が着ていた服の中。 ラブに抱かれた、1才足らずの雅がいた。 ホッ…と、優しく微笑むラブ。 それに、無邪気な笑い声で応える。 「終わったな、紗夜」 いつの間にか出てきていた富士本。 もうあの少女の姿はない。 「はい。終わりました」 まだ疼く掌を、ポケットに隠す紗夜。 それを目の片隅で知るラブ。 (あの時美優は…一体何を変えたの?) 後から3人に尋ねても、何も覚えてはいなかった。 新垣が見た未来に、何があったのか? 美優が紗夜に叫んだ理由は? もう今は、誰も知ることはできない。 いつか訪れる、その時まで。 「あれ? ここは…」 「柴ちゃん、何でこんなところに?」 正気に戻った柴咲とカメラマン。 転がったカメラに手を伸ばした瞬間。 「うわぁあ💦」 驚いて飛び退(すさ)る彼。 戻ったKANNAが、魔術でカメラを燃やした。 真実は、見た者の心の中に、隠されたのである。
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