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〜葛飾区京島〜
まだ修復中の新龍会本部ビル。
赤いベンツが停まった。
「あらら、結構暴れましたね神さん」
「バカ、原田。俺がやったのは…って言うか、ジジイの殺し屋がやったのは下だけで、上は凛達で俺じゃねぇ。ちょっと待ってろ」
ボヤきながら車を降り、門をくぐって中へと入る。
「ご…ご苦労様です❗️」
「おぅ」
まだギブスをしている者や、怪我が完治していない者も多い。
「酷くやられたもんだな」
…半分は神である💧
復旧仕立てのエレベーターで、最上階に上がる。
いつもの神林はもういない。
厳重に警備された会長室に着く。
インターホンで知らせる組員。
「皓然様、飛鳥組長です」
(皓然様?)
「よし、通せ」
ロックが解除され、ドアが開いた。
広い部屋に黒大理石のデスク。
天井まである防弾強化ガラスの窓。
アンティックで、中国王朝時代を思わせる椅子。
向こうを向いて、東京の景色を眺めている。
「先日の件ですか?」
椅子を回して、振り向きながら始める。
「何か変わったな皓然」
「ええ、今回のことで、所詮男は信用ならぬと悟りました。あれほど力を与えたのにな」
信頼していた、神林のことで間違いはない。
「まぁ、以前のお前に戻ったなら、それはいい」
「以前の私なら、お前の首を獲る」
(えっ…💦)
「ハハ、冗談ですよ組長。貴方は信頼している」
以前の頂点を目指し、冷酷無比な皓然なら、やりかねないとマジで思った神。
「ところで、何であの伝説の殺し屋がここに現れて、どうして私が戦うことになったのだ?」
(そこかぁ…やっぱり💧)
「か…神林が脱獄させ、雇ったんじゃねぇか?」
「私を殺る為にか? 話によると、奴は神に復讐するとか言っていたらしいが…そもそも、中国に行っていた私が、ラブに連れ帰って貰わなければ、あの場に現れるはずはない」
仰る通りである。
「そう…だな。確かに、うんうん」
「まぁいい。あの時、神が庇ってくれなければ、私は無事ではすまなかった。それに、組員を1人も殺さずにいてくれたことにも、感謝している」
ホッとする神。
刀は全て峰打ちで、斬りはしなかった。
皓然も、敢えて三節棍を使用した。
「しかし、かなり修復に金が掛かってな。特に3階から上が酷い。何がどうすればああなるのか…唖然とした」
「下の修復は、組に任せろ。上は、正直なところ俺にも分からねぇが、TERRAの凛がやったことだ。だから請求書は…」
「安心しろ、既にラブから連絡が来ている。神林が夢眠の仇である新咲凛…いや、箔・傅凛を狙ったことも聞いた」
「そうか、それなら話は早ぇ」
「ラブと戦って死んだはずの傅凛が、顔と名前を変えて、ラブのところにいる理由は、分かる気がする。 神が察と付き合っていることよりは、あり得る話だ」
「いや…あれはその…成り行きって言うか💦」
「否定しないと言うことは、噂はマジか…」
(やられたぁ〜💧)
一瞬の軽蔑した視線が、神を貫いていた。
「ま…まぁいい…のか? よく分からんが、コソコソ闇取引している奴らよりは良い…と思う」
(さて、呼んだからには、そろそろ本題か?)
「ところで、相談だが。神林に代わる者が思い当たらなくて困っている。誰か逸材が居れば、頼めないか?」
「そんなことか」
「どんなことだと思ってたのだ? 私にとっては大事なことだ」
「おぅ、悪ィ悪ィ。丁度、東京へ帰りたがってる奴が大阪にいる。浜崎 菊矢…でどうだ?」
「聞いた名だな。確か関西の…」
「あぁ、俺の親父が死んだ後、大阪を元黒龍会の山崎蘭に任せている。蘭の側近で、まだ若ぇが、なかなか大した奴だ。東京に親がいてな、戻りたがっているらしい」
「蘭の側近なら申し分ない。よろしく頼む」
「分かった。近い内に来させるぜ」
ついでが来ない内に席を立つ神。
それを止めず、ただついて来た皓然。
「神…」
(ほら来たか?)
「何だ?」
不用心に振り向いた神。
(えっ?)
その体を引き寄せ、唇を重ねた。
そっと、少しの間そのまま。
閉じていた目を開いて離れる皓然。
大混乱中の神。
「命を救ってくれた礼だ。気にしなくていい」
「…って💦 おい皓然」
「まぁ、あの刑事が殉職するか、飽きたら言ってくれ。その時、考える。…ありがとう、神」
「フッ…こちらこそ。じゃあな」
さり気なくドアを閉め、出て行く神。
「あ…あの組長、こっちですぜ」
その先には壁しかない💧。
「おっと💦 そうだったな」
(どうなってんだ、全く)
とりあえず、信頼できる仲間であることには違いない…と理解する神であった。
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