【終章】真相と…

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甲斐の写真を手に取って見る真純。 そこへラブが付け加える。 「しかし彼はその後、江東区千石にある、5階建ての古いビルで、遺体で見つかりました」 「ニュースで見ました。私の子…雅が、まさか創生主の甲斐を殺すとは。彼にも予想外だったでしょう」 微かに、ラブの唇が笑みを見せた。 真純が気付かないほど僅かに。 「その千石のビルですが、電気料金の支払いは、太平鉱業と言う会社が行っていました。ご存知ですよね?」 「えっ? 太平鉱業…さぁ? たくさんの下請け業者や取引先があるもので、お恥ずかしながら…」 「ですよね〜。さすがに全ては、覚えてはいられないでしょうね」 笑顔で合わすかの様に見えたラブ。 急に真顔になり、真純の目を見た。 「太平鉱業は、高嶺社の古くからの得意先で、取引金額も上位3つに入る会社よ。知らないわけないでしょ、真純社長?」 当然知っていた真純。 話の流れから、咄嗟の嘘を悔やんだ。 「あっ! あの太平鉱業さんですね。すみません、色々なことがあり、今は雅が戻って来て、複雑な心境でして…ボーっと聞いてました。今日はこの辺で…えっ?」 真純が目を逸らした先に、富士本と咲がいた。 その奥からは、紗夜と淳一、真田と桐谷。 豊川まで勢ぞろいした。 「話は全て聞かせてもらいました。高嶺社長」 しっかり目を見て、富士本が告げた。 さすがに一瞬驚いたが、そこは財閥の頭首。 直ぐに冷静さを取り戻す。 「どう言うことですか、ラブさん?」 憤慨した様子も見せず、ラブを見る。 「まだシラを切るってぇ〜の?」 「咲さん、もう少しだけ我慢しててください」 掴み掛かりそうな咲を、富士本が引き止める。 「落ち着け、咲」 ラブが2枚の紙を取り出し、両手で真純の目の前にぶら下げた。 「滅殺状は、雅が送ったもの。山手線の予告状を送ったのは…貴方ですよね?」 「何? バカなことを言わないで下さいラブさん。冗談にも程がありますよ」 「雅の文ではなく、甲斐でもない。甲斐は、『信頼』なんて言葉は使わないわ。真純社長のは、よく使われますけどね」 「何で甲斐が使わないと断言できる?」 「間違ったわ。使わない…じゃなくて、使えないだった。ねっ、豊川さん?」 「あぁ、あんたは知らなかっただろうが、爆弾を仕掛けた後、甲斐は雅に殺された。検死結果じゃあ、予告状を送る前日か、その前にな」  (⁉️) 明らかに動揺が見えた。 真田が追い討ちを加える。 「それに、『甲斐の死亡が確認された』とは報じられましたけど、いつ死んだかはおろか、雅に殺害されたなどの詳細情報は、一切伏せています。刑事課の者しか知らない情報ですよ、社長」 「クッ…あれは、私の想像で言ったまでのこと」 「なるほどね〜それは確かに、想像できなくはないわね。これはどうかしら?」 桐谷が、ボイスレコーダーのスイッチを押す。 『あのビルは、太平(おおひら)社長、貴方が電気代を支払っていたのは、調べがついてるのよ?』 『ち…違うんだ。あれは…高嶺さんにお金で頼まれただけで、私は何のためのビルかも知らない。信じてください!』 「らしいですが、どうします?」 「あいつ…それは彼の言い訳で、偽証だ。私はそんなことを依頼していない! 証拠があるのか?」 「高嶺社長、明らかな嘘です」 紗夜が告げた。 『嘘』と言う言葉に、明らかな動揺が走る。 「そ…そんなもの、ただの噂だろう」 そこで桐谷が、もう一度スイッチを押した。 『太平(おおひら)社長、あるビルの管理をお願いしたいのだが…これで、引き受けて貰えますか?』 『こんなに? 高嶺さんの頼みを、断る訳にはいきませんな。分かりました』 スイッチを切る。 「彼は用心深い方で、貴方との会話は万一のために、記録していました。敢えて詮索や確認はしなかったそうです。賢い方です」 「私が所有しているビルは、沢山ありましてね。その中の1つでしょうが、どうするつもりだったのかは、覚えていませんね〜」 今にもヒールを脱いで、頭に突き刺しそうな咲。 何とか富士本と淳一が抑える。 「雅は甲斐計画は忠実に守りました。最初に官邸を爆破し、山手線の15駅を爆破。駅ビルに、高嶺社の関連会社などが入っていない駅をね。偶然でしょうか?」 「でしょうね。今聞いて知りましたよ」 「そして残りの駅は、関連会社がみんな芝浦に出来た新しい工業団地に移転した後、爆破されました。良かったですね〜無事で」 「正に奇跡と言うべきでしょう。助かりました」 淡々としたラブと真純のやり取り。 刑事課の怒りが込み上げて来る。
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