【終章】真相と…

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咲や皆んなの限界を感じたラブ。 (皆さん、私に任せてください) そのラブのは、皆んなの頭に届いた。 ラブが続ける。 「その後の、消防署と自衛隊の爆破は、雅がこの東京を支配する為に行ったもの。貴方は気付いたはずでは?」 「何のことですか? しかし、全く酷いことを…本来の息子ではなかったとしても、申し訳ない思いで、大変辛いことです」 依然として、冷静な真純。 ラブの態度が変わる。 「ふぅ〜。長い前置きでしたが、率直に私の推論を言うと…今回の事件の仕掛け人…いや、首謀者は、高嶺真純社長…貴方です!」 目を見て言い切ったラブ。 一瞬、僅かに身を引く真純。 「ラブさん、いくら貴女でも、名誉毀損で訴えますよ。会見でも話した様に、全て私のために、亡き妻が企んだもの。夫として責任は感じていますが、私ではありません」 きっぱりと言い返した。 それに、笑みを見せるラブ。 「貴方は悪知恵の働く方です。まぁ…厳しい貿易経済を仕切るには、恐らく適任なのでしょう。会見で貴方は、草吹甲斐と神林尚人との関係を問われ、妻の志穂さんが、貴方を社長の椅子に座らせる野心のために行ったこと…と2回繰り返し、知らなかった…と、真実を話しました」 「いかにも。その通り、真実を答えました」 「バカにするのも、それくらいにしてはどうですか? 答えになっていて、全くなっていません」 初めて敵意を剥き出しにしたラブ。 「真田さん?」 「はいラブさん。公言している訳ではないので、名誉毀損には該当しません。先程のことも」 「クッ…」 初めて歯を噛み締めた真純。 「質問は、あなたが彼らとどうなのか? であって、志穂さんの企みを知っていたかではない。関係なかったと言えるなら、今言ってみなさい❗️」 突然の強い口調に、咲達も驚く。 少しの間が空いた。 「今更何を言う。バカらしい、帰らせて貰う!」 「バンッ!」 カウンターを掌で叩き、勢いよく立ち上がる。 倒れる椅子を、伸ばした片足で止めるラブ。 そこへ。 「それは困ります。高嶺社長、貴方がね」 花山が現れ、近付いて一枚の紙を見せた。 「話は全て聞きました。その上で、重要参考人として、取調べを許可した令状です。もし逃げたら、公務執行妨害の罪になります」 「花山警視総監…貴方まで!」 怒りを露わにする真純。 しかし、従うしか仕方ない。 「座ってください」 ラブが戻した椅子に、座り直す。 「あなたの社内での評判は大変いい。本来なら社長の椅子とは遠い三男。その信頼は関連会社にまで及び、ある意味見えないところで、高嶺を支えていました」 攻めると見せて褒められ、考えが分からず、ラブを見る目が細まる。 「しかし。最近の貿易経済の悪化で、貴方の主導者としてのやり方に、批判の声が上がり始めていた様です。その最たるものが、思い切った先行き投資の資材購入です」 「ハハハ、良くお調べになられた様で。さすが顔の広いラブさん。私は冷静に先を見据えただけです。確かに、周りはそれを批判しましたけどね」 「そこに来て更に、芝浦工業団地計画。国の施策とは表向きの話で、実質はあなたのプロジェクト。果たしてそんな自信がどこから?」 「全ては今般のテロや災害の増加。必ずそれは近い将来起き得るという、この国を思ってのこと」 「確かに、実際に今回東京は、かつてないほど壊滅的に破壊されました。甲斐と雅によってね。結果的には、貴方の思惑通りに事は運び、資材調達の問題はなく、早期復興することができました」 「お役に立てて光栄に思います」 「あなたの地位は揺るがないものとなり、大きな収益を傘下や関連会社にもたらした。恐らく雅の暴走によって、あなたの計画以上にね」 「これはこれは、ラブさんにしては珍しく、かなり棘のある発言。本当に私が画策したと思っておられるらしい。それ以上は、さすがの私でも、我慢できませんよ」 柔らかな顔から、高嶺家の本性が覗く。 その鋭い目を、笑みを浮かべて見返すラブ。 「残念でしたね」 「何?」 「我々が真実に気付かなければ、東京は今回の貢献に感謝し、近い都知事選は間違いないもの。或いは、今回の責任を自らの責とし、眉村首相が退任すれば、その座さえ見えていたものを」 「馬鹿げたことを。そんな大それたこと、考えたこともない。さて、もう持ち駒は全て出し尽くしましたか? ならば帰らせてもらいますが」 (フッ…ジ・エンドってところか) 何も実証できないことは、分かっていた。 「The end. なんて思ったら、大きな間違いよ」 「何っ⁉️」 (読まれた?) (ぜ〜んぶね❗️) そのは真純を含め、全員に届いた。 「そんなバカな❗️」 「話しながら、色々考えてくれたおかげて、あなたの全てを知ることができました」 「何だと…」 「高嶺真純。お前を告訴することも、逮捕することもできない。でもね、ここにいる全員。お前が大勢の人達を殺したことを忘れない❗️」 あの花山も富士本も、全員が睨み付けていた。 「クソッ‼️」 思わず立ち上がり、逃げ場のないカウンターに寄りかかる真純。 「ガタンッ!」 倒れた椅子が、崩壊する彼の(とりで)の音となる。 「あたし達は、アンタをずっと死ぬまで見張ってやるから。毎日怯えながら生きるがいいわ❗️」 咲の言葉に、紗夜と真田がうなずき、淳一がニヤリと笑い、桐谷が指で撃ち抜いた。 「そうそう、忘れるところだったわ。豊川さん」 「おぅ、これか。雅からのプレゼントだ。肝に銘じて、大切にするんだな。捕まっちまった方が、どんなに楽かと思うはずだぜ」 隠れ家で押収した、あの地図を渡した。 爆破した場所が記された、東京の地図。 呆然としながら受け取り、(おもむ)ろに目をやる。 そして…ソレに気が付いた。 「そんな⁉️…こ、これは❗️」 「あのね。雅は本来の姿に戻ったけれど、今までの記憶は、シッカリ頭とその心に残ってるわ!」 抱き抱え、無邪気な瞳の奥底を覗いたラブ。 そして、ソレを知った。 「もし機嫌を損ねたら…ドッカーン💥ってね❗」 その地図に記された、まだ爆破されていない点。 そこは、芝浦の新しい工業団地であった。 既に、高嶺の新しいビルが完成した場所。 そこに、一際(ひときわ)大きな印が、記されていたのである。
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