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【2】混沌の捜査線
〜中央区お台場〜
警視庁凶悪犯罪対策本部。
30階建てのビルの3階に刑事課がある。
始業して間もない8:40。
刑事課の電話が鳴った。
「はい警視庁刑事課、朝っぱらから事件?」
「咲さん内線ですよ」
いつも通り鳳来咲が取り、スピーカーに替える。
それに神崎昴が一言告げた。
「咲刑事に、稲村さんからです」
「稲村? 私のファンか苦情か知らないけど、今爆破事件でそれどころじゃ…」
「藤堂美波が消えました!」
受付の伊東の声に、聞いていた咲、富士本、昴の3人が、動きを止めた。
「繋いで」
「もしもし、鳳来咲刑事ですか?」
「そうよ、消えたって、間違いないの?」
「はい。今朝早くだと思います。置き手紙がありました。夫が今、スキャンして送っています」
昴が受け取りの合図をジェスチャーする。
「分かったは、今までご苦労様。あなた方夫婦には、この先は関係ないこと…って言っても気になるわよね。何かあれば、可能な範囲で連絡するから、後は任せて」
「彼女を…美波を守ってあげてください。いい娘なんです! よろしくお願いします」
「分かってるわ。ごめんなさい、今忙しくて」
「爆破事件ですね、ニュースで聞きました。ではまた。失礼します」
稲村の方から、気を遣って切った。
顔を見合わす3人。
「昴、彼女の位置を把握して。紗夜と桐谷、藤堂美波が姿を消したわ。位置情報を送るから、2人は身柄の確補をお願い」
美波の逃走を警戒し、TERRA製の超小型のGPS発信機を、腕に注射して埋め込んであった。
「美波さんが? どうして今になって…」
「紗夜、考えても無駄よ。とにかく行きましょ」
「2人とも…重要危険人物であることを忘れずに。気を付けてね」
耳の通信機で伝えた咲。
嫌な予感が頭を過ぎる。
「これって…紗夜さん、桐谷さん、彼女は今山手線の外回りに乗っています。もう直ぐ池袋駅に。スマホの追跡アプリに送ります」
「了解。紗夜、ここからなら…上野で乗り込みましょう。私の車に乗って」
「分かりました」
「紗夜、気を付けてな!」
夫の淳一が、一声掛ける。
「部長、心配ないわよ。美波は危害を加えない限り、安全だから」
心配気な富士本に、気を遣う咲。
そこで咲の携帯から『愛の讃歌』が流れ始めた。
「今度は外線です」
慌てる咲を、昴が冷やかす。
「もしもし神! 今は大変なのよ💦」
関東一帯を仕切る、飛鳥組組長、飛鳥 神。
色々あって、対策本部とは縁があり、咲の秘密?の恋人である。
「そうらしいが…こっちもかなりヤバい状況だ。新龍会本部で8人が撃たれ、1人が死亡」
「それは大変だけど、ヤクザの抗争なら、悪いけど新宿署に任せるわ」
「普通なら…そうするんだがな。死んだのは進藤 刃で、殺ったのが藤堂美波となれば、話は違う」
「なんですって⁉️」
咲の声に驚く、昴と富士本。
「美波が、刃を殺した⁉️」
「それだけじゃねぇ、拳銃二丁と弾一箱持って、あと2人殺さないといけねぇらしい」
「今、紗夜と桐谷が美波を追ってるわ。連絡をありがとう。組長の謝 皓然と
神林 尚人は?」
「皓然は上海へ行ってて、神林は妹の葬儀以来、消息不明らしい」
「分かったわ。神、悪いけど今夜は無理そう…また連絡するわ」
電話を切った。
「紗夜、桐谷、美波は新龍会に乗り込み、自分のオリジナルである進藤由香の父、刃を殺したわ。銃を二丁所持し、あと2人ターゲットがいるとのこと。気を付けて」
「美波さんが刃さんを?」
真意を理解できない紗夜。
「きっと由香と母親の仇打ちよ。しかし…危険なスイッチが入った様ね。厄介だわ。あと2人が、私達じゃないことを祈りましょ」
不気味な疑念を持ちつつ、上野へと向かった。
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