【2】混沌の捜査線

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〜警視庁対策本部〜 様々な事件が立て続けに発生。 対策会議も、午後遅くになった。 全員が集まるのを待って、咲が始める。 「皆んなお疲れ〜。最初に紹介しておくわ。彼は警視庁の特別刑務官、舟越(ふなこし) (れん)さん。今回の移送車襲撃事件の運転手です。暫くは、ここで捜査に協力してもらうんで、よろしく」 「舟越です。この度は私のミスで…」 「スト〜ップ! そんなネガティブなリベンジ刑事(デカ)は要らないわよ。あれは、あなただけの責任じゃないわ。必ず裏がある。ここでは気にしないでいいから、ガンガンやってよし!」 「その通り、ここに来た以上は仲間だ。よろしく頼むぜ!」 淳一が、咲のリードをサポートした。 「分かったでしょう。ここは、こういう所だ。それに、あなたの殉職したお父さんは、私の先輩の姫城警部と知り合いだと聞いた。頼もしく思います。力を貸してください」 「ありがとうございます! 頑張ります」 連帯感ある雰囲気に、強い信頼を感じていた。 (これが有名な特対部か…納得) 「蓮…って呼ぶわね、これをいつも耳に。全員と繋がってるし、個別に話す時は、ここを押しながら名前を呼べば、切り替わるわ」 TERRA(テラ)コーポレーション製の通信機を渡す。 「通信、分析、追跡システム担当の昴です。ここ意外の人も数人持ってるから、通常時はここをAに切り替えて使用してください」 「分かりました。ご親切にどうも」 「じゃあ始めるわよ。まずは、警視庁爆破事件から、豊川さん…いいかな?」 意外なご指名に、一瞬戸惑う。 見た目よりは、かなりシャイである。 「え〜、爆発は今朝の8時30分。霞ヶ関の警視庁北側建屋の1階から3階までが、幅約20mに渡り壊滅。死者12名、負傷者多数」 現場の写真を昴がモニターに映す。 「使用されたのは、セムテックス爆薬に、ジェット燃料などの、高純度な石油を混ぜ合わせたものと推定。先日新宿で爆破された、東京都庁第二本庁舎と同じ物と考えられる」 「ジェット燃料について、昴さんが割り出した入手経路を調べたところ、神奈川県川崎市にあるヤマト石油の製油所で、2ヶ月前に中型タンク車1台分が紛失していることが判明しました」 「1台分だと、真田!?」 「偽のタンク車に騙された様で、神奈川県警には届けは出ていましたが、間違いじゃないかと、まともに捜査はされなかった様です」 「淳、きっと総生産量から見れば、些細な量なんじゃない? その証拠もないって感じかな」 「確かに咲さんの言う通り、気付いたのも月締めの時に、1台数が合わなかった様で、追及したら間違いを否定はできないと。ただ、記録係の女性事務員の目は…真実だと思います」 真田の超感覚的状況認識能力。 それが外れたことはなかった。 「いずれにしろ、今更その真偽はどうでもいいわね。燃料のスジは諦めましょ。問題は一体誰がなぜ?ってとこね。淳、殺人事件の方をお願い」 昴が、刺殺された消防隊員の写真を映す。 「殺されたのは、霞ヶ関消防署の隊員で、消防服の上下を脱がされていた。俺はその害者の名札を付けた消防服の奴とすれ違ってたんだ。クソッ!変な奴だとは思ったが、まさか…」 紗夜か桐谷や真田ならば、違ったかも知れない。 そう思って悔しがる淳一。 「仕方ないですよ。あの現場では、救助活動を優先せざるを得ない状況でした。それに実際、そいつを引き止める代わりに、1人の命を救ったじゃないですか」 久宝がフォローする。 「とにかく今のところ、そいつが容疑者ね。犯人が犯行現場に現れるのは定番だけど、まさか消防隊員を殺してなりすまし、警察だらけの現場の真っ只中になんて、聞いたことないわ」 「殺害の手口だが、背後から肋骨の間を抜けて、心臓まで一刺し。返り血を浴びることはねぇ。完璧な殺しのプロだな。凶器は太い針の様なもので、手で握るタイプの暗器に似たものがある」 昴が探し出した暗器の写真を映し、報告する。 「淳一さんに言われて、周囲の監視カメラを探りましたが、探し出せる状況ではなくて…」 「ただその消防服は、近くの路地裏で見つかり、目撃者がいました。浮浪者でしたが、そいつの証言と、淳一さんの言う特長から、CAPS(ギャップス)が作り出した人物がこれです」 CAPS(Criminal(クリミナル) analysis(アナリシス) prediction(プロダクション) system(システム))は、刑事課が持つ犯罪者分析予知システムであり、バージョンアップにより、新たな機能が加わっていた。 「んん?」 「何だか見たことがある様な…」 顔は前髪とうつむいているせいで、はっきりわからないが、風貌に引っ掛かるものがあった。 「念の為所轄には、彼に恨みを持つ者がいないか探らせてるけど…多分そんな目的ではないわね」 「単に間近で観たかっただけ…」 つぶやく紗夜には、ある人物が浮かんでいた。 「前の現場ももう一度、探してみます。現場の内部にいた者までは、さすがに疑っていなかったので」 分析作業に入る昴。
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