その先にはありません

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「50メートル先、右方向です」 淡々と、流れる音声に、僕は、喧嘩を売った。 画面には『再検索』の文字。 「2キロメートル、道なりです」 思い切り、ハンドルを切ってやる。 再び『再検索』の文字。 何度か繰り返す喧嘩、その度に新たな進路を示してくるコイツ。 コイツは、どうしても、俺を『自宅』へ帰したいらしい。 俺は、そこを目的地にした覚えはないのだけれど。 喧嘩に喧嘩を重ねた結果、たどり着いた場所。 緑色のど真ん中。周りには、もう、進む経路は見えない。 俺は、コイツに『じゃぁな』と別れを告げた。 「兄さんと連絡が取れなくて!探してるんです!」
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