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 きみは魔女だ  偶然がいたずらするたびに きみとの再会 「さようなら」の呆気ない一言で終わった 僕らのカンケイはまた色褪せてゆくのに  きみはまた 前よりもっと綺麗になった  きみの笑顔は 初めましてのあのトキメキさえ超えて 眩しくなった  一言 二言 他愛のない言葉を交わすだけ  別れ際に 「幸せだな」って呟くきみは  僕と寄り添ったあの時より ずっと幸せそうに頬を染めている 「元気でな」ってカッコつけて背を向けてみたけど  みっともないほど僕の顔は涙でぐちゃぐちゃで  好きだ 好きだ 好きだって あの頃みたいにもう言えないけど   好きだ 好きだ 好きだって あの頃みたいに抱き合いたい  矛盾だらけの感情が 僕の胸を抉るように渦巻いて  一人ぼっちで涙の夜を 何度も何度も繰り返すけれど  やっと涙が渇いて ふらりと ゆらりと 陽の当たる道を歩いてみたら 「また会えたね」  きみはさらに綺麗になって 気ままな猫みたいに僕と出会う  そしてまた 「幸せだな」って 僕の見たことのない笑みを 僕を見てない遠い眼差しで心ここにあらず  偶然のいたずらのせいにして  本当は離れられない 僕ときみが見つけた穴場  足が勝手に引き寄せられ 陽の光に照らされた 思い出の小川のほとりで 今日もまた きみと  きみはいつでも離れられるのに ここは落ち着くんだって  気まぐれみたいに でもほんのり妖艶に 笑って言うんだ  昨日も 今日も 明日も 明後日も  きっと ここで「また会えたね」って  そのたびにきみは 綺麗になっていく  そのたびにきみは 僕を惹きつけていく  きみはいたずらな魔法をかけていく  きみは 魔女だ  世界で一番美しくて 恐ろしくて 愛おしい  きみは 魔女だ
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