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変化
充実した一週間が過ぎ、ようやくお待ちかねのデートの日が来ました。普段は化粧もせず、髪も色気のない一本縛りのところを、なるべく美しく見えるように工夫しました。長い髪をヘアアイロンで内巻きにし、菜の花色のワンピースを着て、約束のベンチへ向かいました。
日付と場所は指定したものの、よく考えてみれば、デートの時間を伝えることを忘れていました。
「まあいいわ。一日中予定なんてないんですもの」
楽しいデートに似合わないミステリーは、家の本棚にしまい、珍しく持参した恋愛小説に没頭しました。上下巻ある長編小説。その下巻の真ん中あたりを読んでいましたら、低い落ち着いた声が聞こえました。
「また会えたね」
目の前には、待ちに待った彼がいました。
「本当に会えて嬉しいわ!」
わたしたちは、お日様のもと、たくさんお話しをしました。わたしは今仕事をしていないこと、親とうまくいっていないことなどを赤裸々に語りました。彼は、現在建築士として働いていること、趣味にサーフィンをしていることを話してくれました。
「まあ!意外だわ!てっきり野球が趣味だと思っていました!」
「坊主だからかい?サーファーっていう見た目じゃないものな」
アハハハと快活に笑う声は、耳に心地よく、わたしはいつまでも彼とこうして二人きりでいたいと願ったのでした。
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