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空しい気持ちで、また、かわい子ぶって、寂しく涙を流しました。壁に吊るした姿見には、世間的な美しさとはほど遠い、ただの地味な娘がそこにおりました。
梅の精霊の助言通り、わたしはたくさんの人に梅の実を渡しました。大好きな彼にはもちろん、おじいさんの娘の分まで用意しました。それから再び訪ねてくれた乾さんにも渡しました。それでも余ったので、散歩していたおばあさんや、公園でけがをしていた子どもにも与えました。
そんなある時、大好きな彼が言いました。
「綺麗になったね」
と。
もちろんお化粧しているのもそうだけれど、最近は、わたしなんかと卑屈になる機会が減ったためでしょう。自分のいたらなさ、醜さ、欠けたところを必死に取り繕っていた頃のわたしは、自分以外の全てを怖がり、自分にとって都合の良い、甘い甘い蜜だけを欲しがっていたのです。繊細、傷つきやすいというお姫様気取りで、たくさんの不器用な人たちを傷つけていたのです。
「そうかしら?むしろ汚れることが増えたように思う」
ぼそっと詩的なことを口に出しても、わたしと違い、物事を難しく考えない彼には通じるはずがありません。
「ううん、何でもないわ」
にこっと微笑み、わたしはただ、雲一つない青空を眺めました。
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