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幸せ
あれからわたしは、あの丸刈りの男の方と同棲を始めました。海辺の家を借りて、お休みの日は、彼が波と戯れるのを膝を抱えて見守るのです。
「こんなにも幸せでいいのかしら」
梅の木は、ある日を境に、パタリと実をつけなくなりました。充分すぎるほどの恩恵を受けたわたしは、梅の実の効力がなくても幸せになりました。
「あら、今日はもうお終い?」
まだ日が暮れるには早いのに、もう陸に上がる彼。プレゼントしたいものがあるからと、家の中に引っ込んでしまいました。どうしたんだろうと、彼が出てくるのを待っていると、小さな小箱を手にし、こちらに向かって来ました。
「もしかして………」
彼は、小箱から、キラキラ輝くダイヤの指輪を取り出し、わたしの薬指にそっと嵌めてくれました。
「結婚しよう」
力強い目で見つめる彼に、わたしは笑顔で頷きました。
完
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