出会い

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「ただいま」  静かに玄関の扉を開き、わたしは両親に見つからぬよう、コソッと自室に潜り込みました。昨今、男性も化粧をしたり、ピアスや髪染めなどをする時代に、あのような素朴でシャンとした方も珍しい。てっきりわたしは、異性に興味を持てない病なのかと考えていましたが、単に好みの方が現れなかっただけかもしれません。 「重めの人見知りなのに、さっき自然と話せたのは不思議だわ」  知らない人の前では(知っている人でも)、緊張して、うまく話せないのに。自分からデートの申し込みまでしたのですから、驚きです。 「図書室で会うおじいさんと話すときも緊張しないし、良く分からないわ」  きっと、本能で波長が合うと感じたのでしょう。1週間後が待ちきれません。  そんな、恋する乙女にその晩、不思議なことが起こりました。布団を敷いて、草木が風でサワサワ鳴る音を子守唄に、わたしは夢の世界に浸っておりました。その時、枕もとで、大人びた美しい声を聞いたのです。 「はじめまして、都さん。わたくしは、梅の精霊です。いつも、都さんにはお世話になっています。なので、恩返しをしたいと思いました。梅の実をこれから毎朝実らせます。あなたは、その実を大切な方に順に渡して行って下さい。きっと、素敵なことが起こりますよ」  そう言うと、精霊は姿を消してしまいました。  翌朝、庭へ降りると、夢で聞いたとおり、確かに梅の実が1つ成っておりました。 「これを昨日お会いしたあの男性に渡せば良いのかしら?けれど、まだ約束の日まで一週間もあるわ」  悩んだ結果、まずは母に梅の実を渡すことにしました。
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