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おおらかな乾さんは、いつの間にか自分の分のお菓子を食べ終えると、わたしのどら焼きも断りなく頬張っています。それを注意する勇気もないまま、ただ好物のどら焼きが消えるのを、情けなく見守るのでした。
結局2時間近くも乾さんのお喋りに付き合わされ、ぐったりしました。乾さんがようやく帰ってくれると、母が様子を見にやって来ました。
「どうだった?」
心配そうな母に、わたしは一言、
「まだ仕事に復帰するかは迷っている」
と答えました。
「ごめんね、お母さん、せっかくお父さんがコネで入れてくれた会社、辞めちゃって。それに、また仕事復帰できるよう、根回ししてくれて、ありがとう」
褒められることが、何より苦手な母は、気まずそうに顔を背けると、そそくさとどこかへ行ってしまいました。
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