効力

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効力

 あれから梅の実は、本当に毎朝ひとつ、実をつけました。友達すらいないわたしは、あげる人も特におりません。なので、梅の実は、いくつかビニール袋にしまって、冷蔵庫に保管しました。 「梅の実を大切な人に渡すと、いいことあるよ~か‥‥」  実は、梅の精霊のお告げを完全に信じ切っていないわたしは、おじいさんに確認してみることにしました。 「あの梅の実を貰ってから、何か良いことが起こりましたか?」  興味津々のわたしに、珍しく穏やかな口調で、おじいさんが教えてくれました。 「娘とわしが、仲悪いことは知っとるだろう?それが少し、距離が縮まりそうなんだ」  そういうと、娘とどんなことがあったのかを語ってくださいました。 「結婚する気などない男と付き合ったうえ、金もないのにひとりで子どもを育てるなんていいおるから、ずっとグチグチ文句いうとったんだ。でもな、これだと嫌われたまんまだと気づいて、恥ずかしがらずにきちんと思いを伝えたんだ。娘が心配なこと。それから、家での態度が悪かったこと。亡くなった妻に迷惑かけたこと、全部だ。そしたら、多少はわしのこと、突き放さなくなった気がする」    どこまでも不器用なおじいさんのことです。たったこれだけのことを決断するのにも、相当勇気がいったでしょう。 「梅の実の効力、本当みたいね」 「なんじゃそりゃ」  困惑するおじいさんを尻目に、わたしはさらに良いことが起こるかもとウキウキしました。
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