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梅の実
畳の敷かれた部屋で、わたしは1人、することもなく時計の針を眺めておりました。静かすぎるこの部屋では、時計の音ですら煩く響いてしまいます。
平日にも関わらず、仕事はせず、こんなふうに家でまったり時を過ごしているわたしですが、近頃は罪悪感も薄れてきました。なぜなら、生まれつきの弱さはどうしようもないからです。それに、変に罪悪感を感じ、いじけた空気を醸すほうが、かえって周りを不幸にすると気づきましたから。
普段することといえば、庭の手入れ、図書館へ通って本を読むことぐらいです。読書家のわたしは、音楽を流さず、薄暗い部屋で、お日様の光を頼りに活字を追う時間が幸せです。テレビもパソコンもスマートフォンも見向きもせず、浮世離れした暮らしを手に入れるわたしと反対に、両親は不服です。
「うちの娘はええ年こいて、結婚も仕事もせんとは」
少し前には酷く気にしていた定番のセリフも、今ではすっと流します。
「世間体を気にする弱い親から生まれたのですもの。わたしが弱いのは必然でしょう」
そんな風に、両親に向かって恰好つけたものの、やはりわたしも、世間体は気にしてしまうのです。今日も仕事へ行くカモフラージュをして、夕方まで図書館で、時間を過ごすつもりです。
出かける前に、庭の手入れをしようと縁側から降り立ちます。ラベンダー、パンジー、チューリップ。枯れた葉っぱをハサミで切っていたら、ふと、梅が実をつけていることに気が付きました。
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