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「で?そっちはさっきから、何楽しんでんの?」
「へっ?」
凄むイケメンに腰が引ける。羨ましいほど睫毛が長い。
「見てたじゃん。人が手出されてるのに、ろくに助けてもくれないで」
やや暗めのサラサラとした金髪頭が、壁ドンの体勢で、不満げにシャッター際へ私を追いやってくる。
「よ、用事があっただけで」
「ふ〜〜ん」
間近に迫る彼の肩から、柔軟剤だろうか。ほんのり甘いオレンジのような香りがした。
「べ、別に。裏から出たら、あなたが勝手に殴られてただけで」
「それで?」
全身にゾワゾワとした何かが走る。
(近い近い)
「別に私は、何も悪いことはしてないわけで。そりゃあ、ちょっとは立ち聞きしちゃいましたけど」
「やっぱり聞いてるじゃねぇか」
引きで見ると、背丈はもっと低く見えたのに。
いざ目の前に立たれると、思っていたより彼の背が高かったようで、私の身体はすっぽり彼に覆われた。
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