ゲームを始める

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は~ぁ、働きたくないでござる。 近くの竹藪に1億円が入ったバッグでも落ちてないかな? そもそも、近くに竹藪なんてないから無理かぁ。 畑を掘ったら小判が大量に入った壺が出て来るのでもいいな。 あっ、俺、畑、持って無い。 んじゃ、だめかぁー。 日曜日の夕方、築40年を過ぎたオンボロアパートの部屋で1人、家の中でゴロゴロしながら楽に生きられないか考えていた。 いや、特に何も考えていないのか。 ただ願望が全身から滲み出ているだけだ。 あーあ、明日から仕事かぁ。 面倒くさいなー。 借りている部屋と年齢が変わらない俺は、いまだ独身。 一緒に暮らす家族や親しい友達もいないので基本1人だ。 つまり俺は、休日の暇をもて余していた。 とりあえず、ゲームでもするかな。 でも、いつもやっているゲームは飽きてきたんだよなー。 何か面白いゲームでもないかな。 畳の上でゴロゴロしながらスマホを弄る。 『面白いゲーム』で検索すると、『絶対にハマる面白いゲームアプリ100選』と出て来た。 たぶん、こんなに多くハマるゲームなんて無い。 まあまあ面白いと言えるゲームが10~20個程、ハマるゲームは3個もあれば良い方だろう。下手すればハマるゲームなんて無い。 100個も紹介されても全部は出来ないぞ!? 100個もハマるゲームがあったら1日が24時間では足りないだろう。 でも、大丈夫。半分以上がクソのようなゲームだと俺は思っているのだから。 スマホゲームを紹介しているサイトを何ヵ所か見ていると、大体予想通りだった。 その中で気になる物もある。それは、最近人気急上昇中のゲームアプリらしい。 そのゲームは、ロールプレイングゲームで、初めは村人から依頼された簡単なクエストをクリアしていく。 「薬草を採ってきて欲しい」とか「畑にいる夫に弁当を届けて欲しい」など次々と依頼を受けて達成させるタイプのゲーム。 別の街にダンジョンが在って、冒険者となった主人公が魔物を退治して、レベルを上げたり、冒険者ランクを上げていくと書いてあった。 このゲーム、なんだか面白そうだな。 さっそくゲームアプリをダウンロードする。 ダウンロード、インストールが終わり、ゲームのタイトル画面が表示された。 画面の『スタート』を押すと画面が切り替わって主人公キャラのアバターを選ぶ画面になった。 そこには、『やんちゃ坊主』、『普通の男の子』、『おっとりした男の子』の3タイプのキャラが表示されている。 とりあえず『普通の男の子』でいいか?と真ん中のキャラを選んだ。 次に髪の毛の色が選べるようだ。 色は、『グリーン』、『ブラウン』、『ブルー』の三択。他の色は選べないようだ。 何故、この色なのか疑問に思いながら、真ん中の『ブラウン』を選択。 次は目の色とか肌の色なんか選べるのかな?と思っていたら、名前の入力だった。 名前は三択じゃないのか。 『もょもと』・『トンヌラ』・『ひょいざぶろー』とかではなくて良かった? まあ、どっちでもいいか。 名前を考えるのって、面倒くさいなー。 考えてるだけで、あっという間に30分が過ぎていたりするからな。 今回は『ちょむすけ』でいいや。 いや、何かマズイ気がする。うん、『ちょむすけ』は止めるか。 いつも通り、自分の名前をもじった『ゆきのふ』でいいか。 俺の名前は、雪野 歩(せつの あゆむ)で、ただ単に読み方を変えただけの『ゆきのふ』だ。 この文字を入力すると、小学生の時に何故か友達から『ゆきのふじいさん』と呼ばれていたのを思い出す。当時は俺が猫背だったから爺さんと呼ばれていたのかと思っていたが、中学生に成ってから意味が分かり、少し納得してしまったな。懐かしい事を思い出した。 あれから30年以上も経つのか。 とりあえず名前も入力したし、ゲームを始めるか。 スタートボタンを『ポチッとな』と呟きながら押した。
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