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「やっぱり、ダメー!!」
フウナちゃんが急に大声を出したので僕は驚いて心臓が止まるかと思った。
何がダメなの?僕は、まだ何もしていない。
「ゆきのふくん、ごめんね。まだ、恥ずかしくて言えないの」
フウナちゃんは、僕にお辞儀した。
こんにちは、って違うか。
何が「ごめんね」なのか、何が「恥ずかしい」のか僕には分からない。
フウナちゃんが恥ずかしいと思う事は何だろう?僕には想像出来ない。
あっ、もしかしたら、アレかな?
いや、違うか。でも、無いとは言い切れないと思う。
『僕に「好き」と告白』とか?
うーん、やっぱり違うか?
でも、僕に何か言いたかったみたいだけど、何を言いたかったのだろう?
「ゆきのふくんは、いつも気持ち悪いね」とかだったら、僕はショックで倒れちゃうかも。
「気持ち悪いね」と言われて、「確かに」とは、ならないだろう。
実際は「確かに」だけどね。って、うっせいわ。
フウナちゃんは何も言えないのなら、僕は帰るしかない。
フウナちゃんは、寂しそうな目をして僕を見ているけど、僕に帰って欲しくないのかな?
いや、あれは『残念な人』を見ている目なのかも知れない。
今日は、おとなしく帰るか。
「フウナちゃん、僕、帰るね」と言ってフウナちゃんの部屋から出て玄関に向かう。
引き留めて来るかと少しは期待したけど、後ろから「バイバイ」とフウナちゃんの声が聞こえた。
フウナちゃんの家を出た僕は、もう今日は遊ぶ気に成れずに家に帰った。
家に着いたが、家には誰も居ない。母は、どこか仕事に行っている。
母は、また疲れた姿で帰って来るのだろうか?無理をしてなければ良いのだけど。
まだ昼過ぎで早いけど、夕食の準備でもするかな?
その前に、干した洗濯物を取り込んでたたもうか。
庭に出て洗濯物の乾き具合を確認する。
乾いていたのでカゴの中に入れていき、家に入って洗濯物をたたむ。
いつも思うが、母のパンツを見てモヤモヤした気持ちになる僕は、変なのだろうか?
母は24歳で、僕と同じぐらいの子供がいる母親より少し若い。それに僕の母は、村で一番の美人だ。
秋の収穫祭の時は村の男たちに囲まれて大人気だった。
男の人たちからお酒を注いで貰う女性は母のような綺麗な人が数人しか居なかった。
普通は、女性が男性に酒を注ぐようだった。
秋の収穫祭の母は、珍しくベロベロ酔っぱらっていた。酒を飲んで体が熱くなったのか着ていたドレスを着崩して、近くの男性に絡んでいた。いや、絡まれているのか?
自分の母が、あのような姿になるのは気分の良いものでは無かった。
その後、直ぐにオバサンの集団から母は助け出されていたから、特に問題は無かったようだ。
『クエスト達成 5ポイント獲得』
洗濯物をたたみ終えると、いつもの文字が現れる。
これは、いったい何なのだろうか。
考えても分からないので、見なかった事にした。
夕食の準備を始めようかと思っていたら、母が帰って来た。
「おかえりなさい」
「ゆきのふ。ただいま」
母は今日も疲れているようだ。
元気になるまで、仕事を休んで欲しいが、そうもいかないのだろう。
母に、「しばらくベッドで休んでたら?」と言ったら、母は「そうね、そうする」と言って寝室に向かった。
薬師のような事をしている爺さんに、元気になる薬を作って貰った方が良いかも知れない。
でも、僕は薬を買えるようなお金は持っていない。出世払いで貰えないかな?
それよりも、僕は美味しい料理が作れるようにするのが先かも。
今は野菜中心の料理で肉が食卓に出る事が殆ど無い。
僕に出来るのは、肉を得る為に、村の近くに居る魔物を退治する事かも知れない。
女の子が僕と遊んでくれないので、明日は1人で魔物を狩りに行こう。
村の近くなら魔物も弱いので、僕1人でも大丈夫だと思う。ヤバイと思ったら、直ぐに村の中に逃げれば大丈夫だろう。
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