10

4/6
前へ
 /115ページ
次へ
* 粟島はその後しばらく、めそめそと泣いた。 涙がおさまっても、次は恥ずかしさでその場から立てなくなり、そのまま眠ってしまおうかとも思ったが、彼から風呂を勧められて、なんとか立ち上がることができた。 アルコールは涙と共にひととおり流れ落ち、もやついた感情は熱い湯船に浸かると、水面に浮かんで取れていった。 風呂から上がると、高価なアイスクリームが用意されていた。コンビニでしか買えない、新商品の味だ。 たっぷりと気遣われ甘やかされると、うやむやにしていたことを白状しないわけにはいかない。 粟島は、いままでぼやかしていた清宮への感情を、少しずつ打ち明け始めた。 「ばかだよね。なんで清宮なんかって、自分でも思う」 手のひらでカップを握ると、中のアイスクリームは溶けて柔らかくしなった。 「ばかじゃないよ、全然」 新谷は正面に座って頬杖をついている。目がまだ赤いのが恥ずかしくて、下を向いた。 「俺、人にすぐ相談するやつって嫌いなの。相談したいことがあるって近寄ってくる女とかさー、大抵は下心あるじゃん?」 新谷が頷く。彼はいかにも、そういう人間に標的にされそうなタイプだから、苦労したに違いない。 粟島も昔、やっとの思いで付き合いかけた男を、そういう女に横から奪われたこともあった。 相談してくるやつは、地雷でしかない——過去の苦い経験で、わかっていたはずなのに。 「清宮もさ、相談に乗ってほしいとか言うわりに、こっちにもその気があるみたいな態度取ってくるの。俺、そういう奴、大っ嫌いだったはずなのになー……」 「でも、好きになっちゃったんだ」 粟島は口角を緩ませながら、表面が溶けて液体になっているアイスクリームをかき混ぜた。 新谷の顔が、まだまともに見られない。

最初のコメントを投稿しよう!

645人が本棚に入れています
本棚に追加
広告非表示!エブリスタEXはこちら>>