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「美咲と後輩達を国際映画祭に引率したろ?」
「ええ、2年の夏よね」
「電車の中で俺が見つめたらはにかんでた。可愛いなと思ったんだ」
「ふふふ」
「それに、美咲のひたむきさが、俺、好きなんだ」
微笑みあう二人を月光が優しく照らしていた。
翔にとっても美咲にとっても初めての恋で、お互いが特別の存在だった。翔は喪失感が大きく、生きているのか死んでいるのかなんの実感もないまま、月日を送っていた。
翔は美咲を失ってからというもの、毎日思い出に浸っていた。まるで昨日のことのように蘇る美咲との思い出に苛まれた。美咲と交わした会話が一言一句違わず思い出される。美咲の声、彼女の少しだけ残る北海道訛りの言葉が、翔の胸を締めつけるのだった。
「カケルぅ、好きだよ・・・…。」
翔が、岬の先端に立った時、風にこだまするように美咲の声が響いた。翔は周りを見渡したが、勿論、美咲の姿はなかった。翔は、美咲の話を思い出しながら積丹ブルーに目を細めた。
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