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鎧を脱いだ人たちは、父を拠り所にした。
ただ笑ってお酒を飲んで、ただ笑って話をして、そうやって嫌なことを忘れて、安心して、和む。そういう相手として、父を求めた。
たぶんそれは、普段気を張っている人ほど、大切な時間だったのだと思う。
父はいつだってニッと笑って、
「大丈夫だ。」
と皆に言っていた。根拠も後ろ盾もないその言葉は、きっと彼らにとっても、不思議と一番安心する言葉だったのだろう。
草間さんはそういう人たちの1人だったのだろうと、18歳の私は理解した。
「父の親衛隊ですね?その風格は、もしや隊長?」
草間さんの顔を探るように見ながら言うと、草間さんが驚いたように私を見つめた後、プッと吹き出した。
「さすが、園田さんの娘さんだ。」
「まだまだ、足元にも及びません。」
謹んで頭を下げると、またプッと笑われる。
「君、ご尊父を亡くしたばかりの女子高生だよね?」
「ええ、間違いなく。」
真っすぐ目を見て答えると、また草間さんが吹き出した。私はその笑顔を見てホッと息をつき、微笑んで草間さんに言った。
「大丈夫ですよ、草間さん。父は死んじゃったけど、草間隊長も、親衛隊のみんなも、きっと大丈夫。」
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