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あの日、病院に駆け付けた制服姿の私に、男の子を連れたご両親が真っ青な顔で頭を下げた。ご両親は
「お父様が、この子を助けてくれて・・・咄嗟に飛び出してくれて・・・」
と涙に声を詰まらせながら、その時の状況を説明してくれた。それを見ていた男の子は、自分も知っていることを伝えなくてはと思ったらしく
「おじさんにドンって押されて、転んで、膝擦り剝いた。」
と自分の膝を見せてくれた。
「それは・・・ごめん。」
私が謝ると、ご両親が慌てて「そんな!」「こんな掠り傷ですんだっていう意味です!」と声を上げた。
その様子を見て、今のは伝えるポイントを間違えたらしいと悟った男の子が改めて口を開いた。
「おじさん、頭からも鼻からも口からも血がダラダラ出てて、足が変な方向に曲がってた。」
男の子のお母さんが「ひっ!」と息を飲み、お父さんが「そんなことお姉さんに言わなくていいから!」と怒った。
私が男の子に
「それは・・・トラウマになりそうだよね。ごめん。」
と、また謝ると、ご両親が慌てて「そんな!」「大丈夫!大丈夫ですっ!!」と大声を上げた。近くにいた看護士さんに
「お静かにお願いします。」
と小さな声で注意され、周りを見ると、居合わせた患者さんやご家族の方々が、こちらを見ていた。
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