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「すみません。」
私が看護士さんに頭を下げると、ご両親が「そんな!」「私たちのせいで!すみません!!」と、看護士さんと私の両方にペコペコと頭を下げた。
男の子がまた口を開こうとしたので、ご両親が慌てて彼の口を塞いだ。男の子がムッとして、その手を払いのけようとする。
「もう黙ってなさい!」
目を吊り上げて、必死に男の子の口を押えるご両親の様子がおかしくてクスリと笑うと、ご両親が驚いた様子で私を見つめた。私は男の子の目を見て
「どうしたの?教えて。」
と訊いた。ご両親が戸惑ったように私を見るので
「聞きたいです。父の最期の様子。」
と微笑んで言うと、ご両親がまた涙を流し始め、そっと男の子の口から手を外した。
男の子が『ほら。聞きたいって。』とでもいうように、ご両親に向かってフンっと鼻を鳴らした後、私に向き直った。
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