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「おじさん、血まみれで怖かった。」
「うん。ごめんね。」
「足も変な方向に・・・」
またご両親が男の子の口を塞ごうとしたけれど、私はそれをそっと制して、
「うん。怖かったね。ごめんね。」
と男の子に苦笑した。ご両親がおずおずと手をひっこめ、私はぺこりと小さく会釈する。男の子がまた口を開いた。
「俺、泣いちゃって。おじさんがこっち見て。」
「うん。」
「血まみれの顔でこっち見て。」
「うん。さらに怖いね。」
「おしっこ漏れそうになった。」
吹き出して苦笑し
「本当にごめん。」
と謝ると、男の子が大きな目でジッと私を見つめた。
「そしたら、おじさんがニッて笑ったんだよ。」
血まみれのおっさんが、地べたに横たわって笑いかけてくる画を想像し、私はさらに吹き出して
「めちゃくちゃ怖いね。」
と苦笑した。続けて
「しかも、足、変な方に曲がってたんでしょ?やめてよって感じだよね。」
と笑いながら言った。
するとふいに、男の子の大きな目が飛び出したように見えた。それは大粒の涙で、次々と目から零れ落ちていく。私はハッとして笑うのをやめた。
「ごめんね。怖かったよね。」
真剣に男の子に言いながら頭を撫でると、彼は静かに首を横に振った。
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