1.生い立ち

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「おじさん、血まみれで怖かった。」 「うん。ごめんね。」 「足も変な方向に・・・」  またご両親が男の子の口を塞ごうとしたけれど、私はそれをそっと制して、 「うん。怖かったね。ごめんね。」 と男の子に苦笑した。ご両親がおずおずと手をひっこめ、私はぺこりと小さく会釈する。男の子がまた口を開いた。 「俺、泣いちゃって。おじさんがこっち見て。」 「うん。」 「血まみれの顔でこっち見て。」 「うん。さらに怖いね。」 「おしっこ漏れそうになった。」 吹き出して苦笑し 「本当にごめん。」 と謝ると、男の子が大きな目でジッと私を見つめた。 「そしたら、おじさんがニッて笑ったんだよ。」  血まみれのおっさんが、地べたに横たわって笑いかけてくる()を想像し、私はさらに吹き出して 「めちゃくちゃ怖いね。」 と苦笑した。続けて 「しかも、足、変な方に曲がってたんでしょ?やめてよって感じだよね。」 と笑いながら言った。  するとふいに、男の子の大きな目が飛び出したように見えた。それは大粒の涙で、次々と目から零れ落ちていく。私はハッとして笑うのをやめた。 「ごめんね。怖かったよね。」 真剣に男の子に言いながら頭を撫でると、彼は静かに首を横に振った。
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