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ローラードラゴンのロードラーは、何か大きな物を轢き潰したような感触に気が付いた。
しかし、ローラーの隙間に何かが挟まったような感じもしないし、すぐにそんなことは忘れてしまった。
ご存知のとおり、ローラードラゴンはニンゲンの巣の道を平らに保つ益獣だ。
二足歩行型の中型ドラゴンだが、腹部にある大きなローラーが前足の代わりに身体を支えているので、実質的には三足歩行に近い。
ローラードラゴンはニンゲンの出歩かない夜の内に、ニンゲンの巣の道を走り回る。
毎晩何本かずつの道を、独自の巡回ルートに沿って、何往復も。
砂利や土でできた道は、それによって綺麗に、平らに整えられるのだ。
ローラードラゴンは、都会と呼ばれる大きな巣には必ず一頭以上が縄張りを持っているし、都会生まれのニンゲン達は小さい頃からそれをよく知っている。
その恩恵も知っているし、夜中に遭遇した時の危険性も知っている。
ローラードラゴンが積極的にニンゲンを襲うことはないが、暗い夜道、うっかり轢かれたら災難だ。
だから都会の夜の道は、小さな巣から出てきたばかりの田舎者くらいしか出歩かない。
ロードラーは縄張りの見回りを終え、自らの寝床へと帰ってゆく。
成体となったローラードラゴンは親元を離れ、ニンゲンの大きな巣を探して移り住む。
その際、ニンゲンの巣の端に寝床を拵えるのだが、十分な広さがなければ壁を壊して場所を作ることもある。
ニンゲンもそれを学習し、大きな巣を作る時は、あらかじめローラードラゴンの寝床となる区画を用意してくれるのだ。
今夜も何事もなく道は均され、平和は守られた。
ロードラーは満足した気持ちで寝床に入る。
ドラゴンを脅かす者はこの世に存在しない。
ロードラーは誰にも踏み潰されることなく、穏やかな眠りに就いた。
<了>
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